このような質問にお答えします。
この記事を読むことで、
✅ 適応障害について分かる
✅ 適応障害とうつ病の違いについて分かる
✅ 適応障害の治療法について分かる
この記事を書いている人
メンタルクリニックで10年以上臨床心理士として勤務。年間1000件以上のカウンセリングを通して多くの患者さんの治療に携わる機会があります。患者さんの中には適応障害の方やうつ病の方も多くいらっしゃいます。病名の違いと個々人の背景の違いを通して、適切な治療方法を提供しています。
適応障害とは
適応障害は、はっきりとしたストレスが原因で、こころや身体に不調を起こします。
その結果、社会生活(仕事や勉強、家事、育児など)を送る上で大きな支障が出てしまっている状態の事です。
では、うつ病の症状と比較しながら、もう少し詳しく説明してみます。
適応障害とうつ病の違いについて
うつ病 | 適応障害 | |
① | 何か明確なストレスになるきっかけが無くても発症する | 具体的なストレス要因によって発症する |
② | 慢性的なストレスが続いている状態で発症し、ストレスから離れても症状が良くならない | ストレスに晒されてからすぐに症状として現れる。ストレスから離れると症状が良くなる |
③ | 楽しいはずのことも楽しめない | 楽しいことは楽しめる |
④ | 治療が長期化する場合が多い | 治療が短期的になる場合も多い(6か月) |
⑤ | 薬が効く | 薬が効きにくい |
①具体的なストレスのきっかけがある
適応障害の場合は、本人も自覚できるようなストレスがきっかけにより、体調が悪くなっています。
職場の上司から1時間以上怒られ続けた
職場を異動して、新しい環境の中で孤立してしまった
授業中に皆の前で上手に発表できず、周囲から笑われた
人によっては、適当に流してストレスにならない人もいます。
適応障害の人が全てのストレスに弱いかと言えば、そうではありません。
特定の状況や環境において、人一倍影響を受けやすいことがあります。
②ストレス期間は短く、離れると症状が落ち着く
ストレスが起きてから、比較的早いタイミングで適応障害と診断をされる場合があります。
ストレスから離れた時に症状が落ち着くことは、うつ病の方との大きな違いでしょう。
職場から帰ってきたら、気持ちがかなり楽になっている
週末のお休みの日には、比較的ゆっくりと過ごすことが出来る
うつ病の方の場合は、帰宅後や週末など、ストレスから離れても症状は続きます。
しかし、適応障害の方は切り替えが出来ている場合が多いです。
③楽しいことは楽しめる
元々自分が持っていた趣味などをしている時には、ある程度、気持ちも回復し、元気に過ごすことが出来ます。
週末に友人とショッピングに出かける
長期の休みに旅行に行く
このような変化が見られると、周囲からは「あの人元気じゃん」「結局怠けているだけなんじゃないの」などと言われてしまいます。
このような考えの背景には、うつ病の人と同じだと考えるからです。うつ病の場合は、週末は疲れ切って動けなくなる場合が多いです。
④治療が短期的に終わる場合がある
適応障害の治療は、症状が軽快するまでの期間は、6か月程度とされています。
当然個人差はありますが、うつ病の方と比べても短い場合が多いです。
しかし、治療が長引く場合もあり、そのからうつ病になる方もいらっしゃいます。
⑤薬が効きにくい
適応障害の方は、薬が効きにくい場合があります。
症状自体が、環境次第で良かったり悪くなったりします。
環境改善やストレス対処法を見つけるなどを行うことが多いでしょう。
不安の気持ちを、薬でやわらげるような対処療法が多く見られます。
なりやすい人の特徴とは
・生真面目な性格
・完璧主義
・白黒思考が強い
・物事をネガティブに捉えやすい
・一人で問題を抱え込みやすい
うつ病になりやすい人の特徴と重なりますね。
メンタルを崩しやすい人の特徴は、比較的共通点があるのかもしれません。
このあたりの詳しい情報はこちらの記事を参照してみてください
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適応障害と比較されることの中で多いのが、非定型うつ病です。
症状として似ている部分として、
・ストレスから離れると症状が落ち着く
・楽しいことをすると楽しめることが出来る
などがあります。明確に区分けをする部分は難しいですね。
実際に、適応障害からうつ病になる人がいらっしゃいます。その中で、非定型うつ病の人もいるかと思います。
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適応障害の治療方法の紹介
環境の調整をする 休職するのはちょっと待つ
ストレスが起こりやすい環境の調整が大切です。
しかし、安易に休職をしてしまうことには、検討が大切です。
ストレスから離れることで、気持ちが安定しやすいのですが、
ストレス環境が変わっていないことで、復職に躊躇する気持ちがより強くなる可能性があります。
まずは、
職場の環境調整のポイント
- ストレス要因は何かを明確にする
- ストレスを制限する方法を検討する(業務内容を変える/部署を変える/人を変える)
- 会社内のサポート体制を作る(相談窓口/孤立しない職場づくり)
取り組める環境調整を検討するのが良いでしょう。
休職を行うとしたら、長期的には行わない方が良いでしょう。
休職期間は、職場の環境調整を行う期間を目安にしてはいかがでしょうか。
職場から離れずに、環境を調整しながら勤務できる環境を作ることが大切かもしれません。
ストレスへの対処方法を学ぶ
3つのステップが必要になります
簡単な流れ
- 自分のストレスになっていることは何か
- これまでに取り組んだ解決方法の検証
- 新しい取り組みを試してみる
自分のストレスになっていることは何か
ストレスが何から来るのか分からないと対処のしようがありません。
その為、自分の体調やストレスのことを考えてみましょう。
ストレスになっているのは?
・人間関係:上司・同僚・部下
・仕事:仕事の量・内容(責任の重さ・変化・納得できるか否か)
・職場以外:家庭環境・友人知人との関係
ストレスは1つの大きなものだけとは限りません。
いくつかのストレスが重なって大きなストレスになる場合もありますね。
これまでに取り組んだ解決方法の検証
どんなことしてみた?
・ストレスを考えないようにした
・お酒を飲んで忘れようとした
・あえて問題について考えてみた
工夫をして行った解決方法は、結果どのような変化があったのか、なかったのかを検証してみます。
ある程度続けてみないと分からないこともありますので、2週間ぐらい続けてみましょう。
新しい取り組みを試してみる
良かったことは続けてみる
上手くいかないことは止める(改良する)
が良いのかもしれませんね。
あれこれ試してみるようなつもりで取り組めると良いのかもしれません
実験なんだと思うこと
一つ一つがうまくいかなくても、落ち込んでしまう必要はありませんよ。
そこは、「今は実験中」と考えることが良いと思います。
うまくいくかどうか分からないから試しているんだって思うことは大切です。
実験は数も大事
実験は、1回だけで終わってしまうと、「やっぱり失敗した」と失敗体験のみで終わるのは残念です。
次へのチャレンジが難しくなります。
実験はうまくいかないという前提で、何度も試してみることをお勧めします。
最後に【適応障害とうつ病は一部にています】
ここでは、適応障害とうつ病の違いと、治療法について説明をしました。
どちらも心療内科で治療ができる病気ですので、早めに治療を始めることをお勧めします。
症状が軽い時なら、回復も早くなります。
しかし、治療スタートが遅れると、回復も長引き、回復後にも予後(その後の経過)は悪くなりやすいでしょう。
薬物療法が効きにくい場合もあるので、カウンセリングを併用することも治療効果を高める一つになるでしょう。