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うつ病になりやすい白黒思考について臨床心理士が丁寧に解説【必見】

 

白黒思考とうつ病

うつ病になりやすい人の考え方に白黒思考があるって聞いたんだけど、それってどんな考え方なの?それって元々の性格だったりして変えられないのかな。教えてください。

 

 

そんな質問にお答えします。

 

この記事を読むことで、こんなことがわかります。

この記事とは?

✅ 白黒思考って何かが分かる

✅ 白黒思考とうつ病との繋がりが分かる

✅ 白黒思考を変えるにはどうすれば良いのかが分かる

この記事を書いている人って?

メンタルクリニックで10年以上臨床心理士として勤務し、某カウンセリングルーム室長として、年間1000件以上のカウンセリングを通して多くのうつ病の方の治療に携わる機会があります。これまでに福祉施設や教育機関などを含めるとトータル20年以上対人援助職をしています。

 

うつ病は脳の病気です。

適切な医療による治療が必要です。

 

しかし、その方の物事の捉え方や考え方が、症状の悪化や持続にも影響があることが分かっています。

 

この記事を読むことで、うつ病の方や、メンタルを崩してしまいがちな方への治療のヒントになれば幸いです。

 

白黒思考とは

 

白黒思考とは、正しいと間違えがはっきり分かれている考え方です。

 

「白か黒か」「0点か100点か」「正しいか間違っているか」と考えます。

 

 

とてもシンプルで、分かりやすい考え方ですが、白黒思考だけで生活をしていると、逆に難しい場面も多くあります。

 

その考え方故に、自分が自由になれなかったり、人付き合いに疲れてしまうことも起きやすい面があります。

 

 

白黒思考の特徴

 

完璧主義になりやすい

 

間違えてはいけないと完璧を目指すようになります。

 

完璧でないと、プロセスや出来ている部分も全てダメになってしまいます。

 

 

例えば、100点満点で98点のテストが返ってきました。得点です。

しかし、2点の問題を間違えてしまったことに対して、「私は駄目だ、こんな問題を間違えてしまうなんて」と自己否定感ばかりが強くなります。

 

勿論間違えた問題を理解して正すことは大切ですが、出来なかったことばかりを考えて、気持ちが沈んでしまいます。

 

 

人間関係に傷つきやすい

 

人付き合いの中で、相手の期待に全て応えないといけないと一生懸命に頑張ります。

 

しかし、いつも相手の期待に応えられる訳ではありません。

応えられない自分に嫌気がさすし、そんな自分に疲れてしまいます。

また、期待通りに相手が応えてくれないと嫌になってしまいます。

 

 

例えば、彼女が大好きなBBQをしようと、BBQに誘います。

しかし仕事が立て込んでいて疲れていた彼女が、「BBQよりも、家でゆっくりとDVDでも見たいな」と伝えます。

すると、「せっかくこっちはあなたのことを思って考えているのに。私のことが嫌いになったのか。」と考えてしまい、彼女の誘いを断ります。

「嫌いになったんだ。」という考えが無くならず、結局彼女との関係を終らせてしまいます。

 

 

先読みや準備に疲れてしまう

 

物事を完璧にやろうとするばかりに、様々な危機リスクを考えます。

常に最悪な事態を考えて物事を準備するので、準備にとても時間がかかります。

「どうにかなるか」という楽観的な考え方が持てないので、常に不安や焦りを感じやすくなります。

 

 

例えば、勉強会の主催を任されたAさんはその準備に奔走します。

勉強会の内容だけでなく、「もし参加者が途中でついて来られなくなったらどうしよう。」「もしこのプランがダメだったらまずいから別のプランも作っておこう」などとあれこれ準備に忙しくなります。

 

実際の場面では、準備周到で成功を収めました。

しかし、その準備によって疲労が溜まり、その後何日間か寝込んでしまいました。

 

 

白黒思考とうつ病の関連

 

 

白黒思考が強いと、うつ病になりやすい傾向があると言われています。

 

 

多くの人にとって、流してしまえるようなストレスを正面からぶつかり「正しいか正しくないか」の2択で判断しようとすることで逃げられなくなります。

 

また、出来ている部分に注目できないことが続くと、「自分はやっぱりだめなんだ」と自己肯定感が低くなってしまいます。

 

その結果、気持ちが上がらなくなったり、自信が無くなることによって、メンタルを崩してしまいがちになります。

 

なんで白黒思考になるの?

もそも小さい頃は白黒思考なんです

 

小さい子供の思考回路は、そもそも白か黒かです。

 

「お腹がすいたVSすいていない」「悪者VSヒーロー」「正しいVS正しくない」といった考え方です。

 

戦隊ヒーローが悪の化身をやっつけるのに、子どもが惹かれるのはその一つです。

ヒーローが悪者をやっつけて、町に平和が訪れましたというのは分かりやすいストーリーですね。

「悪者にも悪者なりの理由があって、実は本人の家族に多くの借金を抱えている人がいて・・」などと考えることはしません(笑)

 

両親の極端な厳しさや過保護な躾によるもの

 

両親が本人に対して、細かいことまで注意していると、本人は常に自分に自信がなくなってきます。

 

「親に怒られないようにしっかりやらなきゃ」という考えが強くなると、怒られないようにするには間違えてはいけないと考えて行動します。

 

その結果、間違えないことにばかり意識が向くようになります。

 

 

また、過保護に育った子は、親が先回りして色々やってくれる為、間違えたり失敗する経験を持つことが出来ません。

 

少しずつ親の手から離れてきた時に、これまで自分でやった経験が少ないことや、失敗することの恐れから、自分に自信を持ちづらくなります。

 

その結果、失敗しないようにすることばかり考えてしまいます。

 

白黒思考の改善方法

 

コラム法

 

コラム法とは、1つのネガティブな考え方に偏ってしまうことにより、気分が落ち込むなどの困り感のある方に行う認知行動療法の1つです。簡単に言えば、「1つの考えだけではなく他の考え方も選べるようなマインドを身につけること」です。

 

白か黒だけではなく、グレーの部分も持てることを目指します。

 

その為に、自分が陥りやすい考え方(自動思考と言います)を知り、それが色々な場面で起きていることを理解します。

その上で、別の考え方が持てないか(反対意見はどんな感じか)などを考えていきます。

 

詳しくは、こちらの記事を参照してみてください。

うつ病治療の3本柱【心理療法】【変わるのではなく選択肢を増やす】

「このままだったら、どうせまたうまくいくはずがない・・・」「努力したところで状況は変わらないし、周りも理解なんかしてくれない!」上記のような気持ちになって、自分なんて変わることが出来る存在ではないと否 ...

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あえて黒を選んでみる

 

常に白か黒で、白を選ぼうとして努力をしていた人は黒を選べません。

 

そこであえて黒を選んでみる方法はいかがでしょうか。

 

心理学的な説明をすれば、暴露療法という方法になります。

あえて、自分にとってストレスになる状況を体験することで、心配するような事実は起きなかったことが分かります。

そうすることで、「自分が黒だと思っていたけれど、白の時もあるのかな」「黒は黒でも大丈夫な黒もあるんだ」と考えられるようになります。

 

参考例

例:入社1年目のAさんは、「新人だから職場には一番に行かないといけない。そうしないと先輩から怒られてしまう。新人なら当然!」という考え方があり、毎朝6時に家を出て、始業2時間前には職場に着いていました。本人は、一度始めたら変えられず、どんどん疲労感が募ってきました。一度大幅に寝坊して、始業10分前に飛び込みセーフ。怒られるなと思ったものの、周囲は全く気にする様子もなく、普通に朝の準備をしていました。「なんでこんな一生懸命にやっていたんだろう」と考えたAさんは、今は30分前に出勤しています。

 

白黒の考え方をしようとする自分を知る

 

白黒思考をしようとしているのはなぜなのかを深掘りしていくことで、自己理解が進みます。

 

なぜ自分は白黒思考を選ぶのか?

自分の考えを支持している正体は何?

逆に、変わることを邪魔しているものは何?

 

多くの場合、それは思考というよりは感情が影響している場合が考えられます。

怒りや不安、孤独、寂しさ、羨ましさ・・・などなど。

自分の中にある感情を知ること、そしてその感情と上手に付き合えること(いつでもその感情にアクセス出来るし、離れることも出来る)が出来るようになると、その先にある思考や行動も自由になっていくでしょう。

 

最後に【白黒思考でもたまには良いよ・・・】

 

うつ病になりやすい特徴として、白黒思考であるという視点からまとめました。

しかし、白黒思考のネガティブな面が多かったかもしれませんが、ネガティブではない面も当然あります。

ポイント

  • 決められたことはきっちりとこなすことが出来る
  • 品質管理や経理など少しのミスも許されにくい環境でも働ける
  • 考えが逆にぶれないで突き進めることが出来る

 

白黒思考の人が、いきなり変わることは出来ません。まずは自分自身の特徴をしっかり理解した上で、少しずつ別の選択肢を持てるような工夫を始めてみましょう。

 

 

自分のやり方を変えるのは勇気が必要です。しかし、その先には、自分が良い意味で楽に過ごしやすくなるでしょう。

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