この記事では、アタッチメントと発達障害についてお伝えします。
発達障害の子には、アタッチメント(愛着)の障害が起きやすい傾向があります。
クリニックの現場で働いていると、発達障害とアタッチメントの障害を抱えている人にたくさんお会いします。
しかし、本人の言動からは何が障害なのか分かりにくく、適切なサポートが得られにくいなんてことも…。
ここでは、愛着についてや、発達障害と愛着障害の違いなども紹介します。
最後には、効果的な5つの支援方法も紹介しますので、是非最後までチェックしてみてください!
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目次
【まず確認!】アタッチメントは?養育者と結ぶ強い絆
アタッチメント(愛着)とは、人や動物が、特定の対象に対して形成する、強い情緒的結びつき(絆)のことを指します。
愛着形成は、乳幼児の発達はもちろん、青年期や成人期などその後の人格形成にも大きく影響するものと考えられています。
では、どのようにしてアタッチメントは作られていくのでしょうか?
次の章では、アタッチメントを形成していくステップを紹介します!
アタッチメント形成を3ステップで解説します!
アタッチメントの形成は、上記の通り3ステップがあります。
定型発達の子も、発達障害の子もアタッチメントは同じステップで作られます。
しかし、発達障害のあるお子さんは、アタッチメントの形成につまづきやすいことも…。
1つずつ解説していきますので、アタッチメントが作られる流れを確認しておきましょう!
アタッチメントのステップ①:安全基地(安心と安全)
アタッチメントの形成の1つ目のステップは、安全基地です。
安全基地とは、主に養育者と一緒にいることで、赤ちゃんが安心感や安全感を持てる状態のことです。
赤ちゃんは、安心感があると気持ちをポジティブにできます。
同時に、ネガティブな感情をポジティブな感情に変えられるでしょう。
残念ながら、安全基地の感覚が得られないと、気持ちが不安定になりやすくなります。
発達障害のお子さんの中には、不安になりやすい子がいます。
発達特性による過敏さから不安になるということもありますが、アタッチメントが形成されていない可能性も考えられます。
チェック!
人見知りをするのは、ちゃんと養育者との間にアタッチメントが出来ているからです。ADHDの子は、興味関心が強く、衝動的に誰にでも話しかける可能性があります。また、ASDの子は、そもそも人に興味が無いので誰とでも話が出来てしまうなんてことも起きるでしょう。
アタッチメントのステップ②:探索行動(興味あることにアプローチ)
アタッチメント形成のステップの2つ目は探索行動です。
養育者との安全基地が出来ると、徐々に外側の世界に興味を持ち始めます。
安全基地(母親のひざ)から離れて、少しずつ面白そうなものを探しに探索が始まります。
なんだろう?というものを見つけて、口の中に入れてみたり振ってみたりしながら遊び始めるでしょう。
そして、「こんなの見つけた!」とお母さんに報告してくるようになります(もちろん言葉ではなく態度で)。
しかし、発達障害の子は、探索はするのですが報告をしない子がいます。
ASDのお子さんは、1つのことに没頭して周りが気にならなくなります。
探索だけで報告がないので、親としては少し寂しい気持ちにもなるかもしれません。
この時期の成長が十分に出来ていないお子さんは、主体性が育まれていません。
その為、どうしても受け身的になったり、新しいことへのチャンレジに抵抗を感じやすくなります。
アタッチメントのステップ③:世界が広がる
アタッチメントの最後のステップは、世界が広がることです。
探索行動が活発になってくると、行動範囲や内容に広がりが生まれます。
母親から離れて、おじいちゃんやおばあちゃんの所に行けるようになります。
さらに、他のお友達との関係が広がって豊かな世界を造っていきます。
子どもの世界が広がりと一緒に、言葉やコミュニケーション能力が発達していくでしょう。
発達障害の子は、対人関係の広がりに時間がかかりやすいのが特徴です。
行動範囲が広がるだけでなく、他の人とどう繋がっていくのかが大切です。
この時期のアタッチメントが十分に形成されていないと、メンタルの弱かったり、対人関係の課題が増えたりします。
発達に課題がある子にとっては、人との関わり方への対策が必要になってくるでしょう。
愛着障害の2つのタイプとは?発達障害の子との違いと合わせてお伝えします!
愛着障害のタイプは上記の2タイプです。
反応性愛着障害は、一見ASDの子と見分けるのが難しいかもしれません。
また、脱抑制型アタッチメント症候群は、ADHDの子の特徴と似ています。
この章では、それぞれの愛着障害の特徴についてお伝えしていきます。
発達障害の子との見分け方についても知りたい方は、最後までチェックしておきましょう!
反応性愛着障害:無関心と引きこもりタイプ
反応性愛着障害のお子さんは、大人に甘えたり頼ったりするのが苦手です。
楽しいや嬉しいといったポジティブな感情を出すことが少なく、悲しみや興味が無いといった表情を見せることが多いのが特徴です。
小さい頃に親から無視されたり虐待されたお子さんに見られます。
大人に対して過度な警戒心があるので、大人が近づくと無視したり逃げようとします。
反応性愛着障害のお子さんは、ASDのお子さんの特徴と似ている為、見極めが難しい場合があります。
けれど、以下の5つのポイントで見分けることが出来るでしょう。
特徴 | 反応性愛着障害 | ASD |
社会的な相互関係や反応 | 正常な能力あり | もっていない |
良い養育環境を提供 | 改善する | 改善しない |
言語発達 | 障害されることがある | 質的な異常は示さない |
環境変化への反応 | なし | ある |
常同的なパターン | なし | ある |
同じように見える特徴が両者にはありますが、継続的に観察したり関われば違いは分かります。
その子が育った養育環境などの聞き取りが大切な要素のひとつになりますね。
脱抑制型アタッチメント症候群:過度なスキンシップや依存タイプ
脱抑制型アタッチメント症候群の子は、誰にでも愛着行動を示す障害です。
小さい子は知らない大人との接触をためらいますが、この障害のある子はためらいません。
過度なスキンシップを求めたり、相手に依存しやすくなります。
先ほど説明した反応性愛着障害の子とは対照的な症状です。
脱抑制型アタッチメント症候群の子は、行動が活発で感情を抑えるのが難しい為、ADHDの子との違いが分かりづらいでしょう。
しかし、脱抑制型アタッチメント症候群の子は、良い環境を提供すれば落ち着いてきます(ADHDの子も変化はしますが、限定的です)。
またADHDの子の行動は、興味関心による衝動的な行動が特徴です。
しかし、脱抑制型アタッチメント症候群の子は、相手(特に大人)との関わりを求めて行動します(例:一人の時でも落ち着きが無い子はADHDの可能性がありますね)。
愛着障害かADHDかの区別をするには、生活環境の聞き取りや行動観察などが大切です。
アタッチメントの課題をどうすれば良い?5つの対応方法を提案します!
アタッチメントの課題には、上記の5つの方法が効果的です。
適切なスキンシップを持つことや、気持ちを表現出来るようにサポートするのが大切です。
ひとつずつ解説するので、しっかりとポイントを確認しましょう!
対応方法①:適切なスキンシップを持つ
アタッチメントの課題への対応方法の1つ目は適切なスキンシップを持つことです。
愛着障害の子は、これまでに十分な愛着を形成する機会が持てていません。
その為、自分が愛されている・認められているといった体験を持てるようにしましょう。
小さい子なら、ハグをしたり、握手、ハイタッチなども良いでしょう。
遊びの中にスキンシップを入れるなら、じゃんけん列車やおしくらまんじゅうなんかもいいですね。
年齢が高い子には、目を見て話をしたり、友達同士の関わりを増やすのも良いでしょう。
アタッチメントの課題がある子には、年齢に合った適切なスキンシップを持てる機会を作ってあげましょう。
対応方法②:1対1の関わりを増やす
アタッチメントの課題がある子への対応方法の2つ目は、1対1の対応を増やすことです。
愛着障害の子は、人と一緒にいる時に安心感や安全感を持ちにくい傾向があります。
その為、人数が増えると不安が高くなります。
また、ケアをする側の注意もそれやすいので、個別の対応が基本です。
小さい子ならひざの上に乗せて絵本を読んだり、一緒にブロックで遊ぶのも良いですね。
年齢が高い子なら、2人でオセロをしたり、お茶を飲みながらおしゃべりがおすすめです。
愛着に課題がある子が、ちゃんと自分に注目が向いていると感じられるように、1対1の対応を心がけましょう!
対応方法③:気持ちを言葉にしていく(ラベリング)
3つ目の対応方法は、気持ちを言葉にしていくことです。
愛着障害を持つ子は、気持ちが不安定になりやいのが特徴です。
そして、自分の感情を理解できず、もやもやしたり苦しくなったりします。
その為、大人が子どもに対して感情を伝えてあげることが大切です。
例えば、子どもにハグをしてあげるだけでなく、「こうやってぎゅってされると、気持ちが落ち着いてくるよね。」と言葉にしていきます。
すると、子どもは今自分が感じている感情は落ち着いてきている(良い感情)だと分かります。
逆に、ネガティブな感情の時にも使えます。
欲しいおもちゃが友達に使われていて遊べなかった時に、「〇〇君が使っていたから出来なかったよね。それってとっても悲しかったよね。」と伝えます。
アタッチメントに課題がある子の体験と、養育者からの言葉がセットになることで、気持ちを理解し、落ち着けるようになりやすいでしょう。
対応方法④:先手必勝で良い方法を提案する
アタッチメントに課題がある子には、先手必勝で良い方法を提案するのが良いでしょう。
アタッチメントの障害がある子は、本人の希望に応え続けても満足を得られません。
時には、その要望が度を超えてしまう時もあります。
その為、こちらから良いやりかたをどんどん提案しましょう。
例えば、年齢が大きくなってもハグを求めてくる子がいます。
年齢と共にハグではない方法に変えていく必要があります。
その為、養育者から積極的に握手を求めるようにします。
握手をする安心感だけでなく、その時に目を合わせたり会話をします。
ハグよりも時間を十分に取り、満足感が高いものを提供するのです。
そうすることで、愛着のある子どもは、「握手の方が満足するし、沢山関わってもらえる」という学習をします。
アタッチメントに課題がある子には、相手の要望に応えるのではなく、こちらから先に適切な方法を提案していきましょう。
対応方法⑤:プレイセラピーを受ける
アタッチメントの課題を抱える子に、プレイセラピーを受けさせるのも良いでしょう。
プレイセラピーとは、セラピストと子どもが1対1で遊びながら治療していく心理療法の1つです。
アタッチメントの障害がある子は、言葉で気持ちを表現したり、理解をするのが難しい場合があります。
そのため、セラピストと一緒におもちゃで遊んだりおしゃべりをしながら過ごします。
子どもは1対1の関係や、守られた空間(部屋)に安心します。
そして、少しずつ不安や心細さというものを、遊びや言葉によって自由に表現するようになります。
その結果、少しずつ愛着の課題を整理していけるようになるでしょう。
アタッチメントと発達障害についてまとめ
以上の内容をお伝えしました。
アタッチメント(愛着)に課題を抱えていると、本人も不安定になりますし、サポートにも時間がかかります。
発達障害の特性の理解だけでなく、愛着のケアも必要になりますからね。
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