うつ病で治療中の方が、うつ病急性期のように、身体を動かすことがほとんど出来ない時期を経て、少しずつ活動量が増えてくるようになります。
徐々に生活の中に運動を取り入れ始めていこうとは考えているけれど、何から始めたら良いのか分からない人もいるのではないでしょうか。
ここでは、うつ病の人が始めやすい運動方法を3つ紹介します。
自己紹介 この記事を書いている私は、メンタルクリニックで10年以上臨床心理士として勤務し、年間1000件以上のカウンセリングを通して多くのうつ病の方の治療に携わる機会があります。私は、リワークデイケアの運営にも携わり、運動プログラムのリーダーを数年間行っています。実際に、一人で行うには難しい運動もありますが、一つの参考になれば幸いです。
目次 1.うつ病にお勧めの運動【ヨガの呼吸法】 2.うつ病にお勧めの運動【有酸素運動】 3.うつ病にお勧めの運動【人と楽しめるスポーツ3つ】 4.まとめ【最初は大変だけど、やり始めると気持ちが良い】
目次
1.うつ病にお勧めの運動【ヨガの呼吸法】
最初の運動は、呼吸法です。
「呼吸法が運動なの?」と感じられた方もいるかもしれませんが、呼吸法も普段日常で行っている呼吸ではなく、メンタルの安定をキープさせることを目的とした呼吸法です。
緊張した時に、深呼吸をすることで、少し気持ちが楽になった経験がある人もいるかもしれません。
これは、深呼吸をすることで、リラックスする時に大切な副交感神経が優位になるからです。
副交感神経の働きは、加齢と共に衰えていくことが認められている為、意識的に高めていくような働きかけが必要になります。
腹式呼吸
息を吸いながらお腹を膨らませて、吐く時にお腹をへこませる呼吸を、腹式呼吸といいます。
これは、肺の下にある横隔膜を刺激することを目的にしています。
理由は、横隔膜には自律神経が集中しているため、横隔膜をしっかりと動かすことでバランスを整えることができるといった効果があります。
効果:気持ちを落ち着けたり、リラックスしたい時
方法:背筋を伸ばして(または横になって)、鼻からゆっくり息を吸い込みます。このとき、おへその下に風船があって、それを膨らませていくイメージをします。その後、口からゆっくり息を吐き出します。お腹をへこましながら、身体中の空気を出し切ります。その時、吸う時間の倍の時間をかけて吐きます(吸うのに5秒かけて、吐くのに10秒)回数は1日5回くらいから始め、慣れたら少しずつ増やし、10~20回が出来ると良いでしょう。
呼吸法に関する詳しい説明は、こちらの記事ヨガの呼吸法に学ぶメンタルケアを参照してみてください。
2.うつ病にお勧めの運動【有酸素運動】
有酸素運動の代表的なものは、ウォーキングやマラソン、水泳や自転車など、ある程度の負荷をかけながらも、一定時間運動を続けるものです。
一般的には30分以上の有酸素運動を推奨されている場合が多いですが、まずは無理をしないで始められるかどうかが大事です。
永松氏の研究によると、激しい運動を行った場合と、ゆっくりできるような運動を行った場合の、抑うつへの効果の差はあまり見られなかったようです。その為、激しく長い時間をやらなくても良いのではないかなと思い。
注意ポイント 睡眠前の運動は、あまり激しいものにしないこと 睡眠前に、激しい運動をしてしまうと、身体が興奮状態になってしまい、寝付きづらくなるようです。その為、運動を行う場合は、就寝2,3時間前に終らすような工夫が必要です。
3.うつ病にお勧めの運動【人と楽しめるスポーツ3つ】
一人で行う運動をこれまで紹介してきましたが、人と一緒にやる方が、長続きしたり楽しめるってこともあると思います。
ここでは、私が働いているデイケアで人気の運動プログラムについて紹介します。
3.1 卓球
一番人気は卓球です。
大人になってから卓球をする機会ってあまり無いと思いますが、卓球は運動という意味でも効果がありますが、相手と息を合わせて行うという意味では、別の効果があります。
対戦目的ではなく、相手が打ちやすい優しい球を打とうとしたり、相手が失敗しても許してあげる。そして、ラリーが続いたらドキドキしたり喜んだり。言葉を介さないコミュニケーションとしても意味があります。
3.2 ダンス
運動量としてはかなり高いのですが、ダンスは楽しめる運動の1つです。一人で行うよりも、他の人と一緒にダンスをする方が、一体感があります。
一つ一つの動きを繰り返し覚えていくことで、少しずつ出来る喜びを感じやすくなりますし、最後に一通りのダンスが踊れると、そこには達成感を感じます。皆がダンサーを目指している訳ではなく、楽しむことが目的なので、和気あいあいと過ごす時間は、とても楽しく過ごせています。
3.3 人の運動を見て楽しむこと
実際には、身体を動かさなくても、人が運動をしているのを見るのは楽しいものです。
出来れば参加出来た方が、楽しさは増えますが、自分の体調に合わせて休憩を取りながら運動をします。その際に、上記に挙げた卓球やダンスをしている他の人を応援したり、一緒に笑ったりする時間は他者との一体感を感じることにも繋がります。
最初と最後の準備運動に参加するというだけの人もいますが、その方たちのペースに合わせて運動をすることが大切であり、他の時間はその場で一緒に過ごしていることに意味があると思います。
デイケアの活動については、失敗しない復職にはリワークデイケアへ行こうを参照してみてください。
4.まとめ【最初は大変だけど、やり始めると気持ちが良い】
うつ病の人にお勧めする運動を3つ紹介しました。
運動に限らず、何かを始めることは、最初は少し億劫に感じたり、頑張りすぎてしまったりすることがあると思います。
けれど、少しずつ続けていくことが出来るようになると、運動が無いと逆に気持ちが落ちるといったことも起きて来ます。
運動という取り組みが、うつ病治療のプラスになれば、幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。