心療内科の受診を考える人が、受診前に不安や抵抗を感じることがあります。
受診の抵抗は、早期発見、早期治療が出来ず、病状が悪化したり、治療期間が伸びてしまうことが多くあります。
その為、抵抗を減らすことで、早めの受診や休養に繋がることが、その後の生活がしやすくなることも増えるでしょう。
この記事では、治療に抵抗を感じる方がよくお話しされる3点を紹介し、メンタルクリニック勤務歴10年以上の私が、それぞれについて解説します。
この記事を読むことで、
☑ 心療内科治療への抵抗がどうして起こるのかを知ることが出来る
☑ 心療内科への正しい知識を持つことにより、抵抗が軽減する
では始めてみましょう。
■ 目次 ■
1.自分は病気ではない。まだ頑張れると考える人
2.会社にばれたら、昇進できなくなると考える人
3.自分のことをさらけ出すことを避けたいと考える人
4.まとめ
1.自分は病気じゃない。まだ頑張れると考える人
自分はまだ治療をするほど体調不良ではないし、ましてや病気ではないという考えがあります。
自分が病気の状態だという認識が無ければ、治療への抵抗があるというよりは、治療の必要性を感じないでしょう。
では、治療が必要なレベルとは誰がどのように判断をするのでしょうか?
ここが実際に分かりづらいのかもしれません。
風邪などなら、経験的にも1,2日休んでも続くようなら病院に行こうかとなります。しかし、メンタルの治療では、明確な指針がありません。だから、どこまでも頑張れるだけ頑張って、ぶっ倒れてしまうようなこともあります。
また、頑張れる人の中には、一度立ち止まってしまったら、
元に戻れなくなってしまうのでは?と考えている場合もあります。
つまり、自分がかなり苦しい状態だということを分かっているのだと思います。
そして、今の自分が病院に行ったら、休職が必要だと言われてしまい、今の状態に戻れなくなってしまいそうだと分かっているから、無理をしてでも頑張ろうと思うのでしょう。
言い換えれば、自分の中にあるぽっかりと空いた穴を自分から覗きに行ったら、その穴に吸い込まれて落ちていきそうな気持ちになるのでしょう。
うつ病を例にすると、うつ病は治療が可能な病気です。
程度によって治療期間や症状の重さは変わっていきますが、ちゃんと治療が出来ていくことが出来ます。
逆に、うつ病の場合は、軽い状態の時には、短期間で元に戻すことは出来るのですが、重くなってしまうことで、治療にかかる期間が長くなりますし、予後が悪くなることも多いです。
その為、早めに治療にかかることが、結果的に治療を短期間に終わらせ、次のステージに進みやすくなるだろうと考えられます。
また、自分の状態は一番自分が分かっているという考えは危険です。
メンタルの病気の場合は、周囲の方が実は前から気づいているということもあります。
周囲から、大丈夫か?と声をかけられた時には、治療を考えても良いタイミングかもしれません。
自分が治療を受けた方がいいの?と迷ったら、うつ病ってなに?病院に行く判断を臨床心理士が解説【まずは受診】を参照してみてください。
2.会社にばれたら、昇進できなくなると考える人
自分がメンタルクリニックに通院していることが分かってしまったら、
自分はメンタルが弱い人=会社からの評価が下がり、今後の出世が望めないことを危惧される方がいらっしゃいます。これまで積み上げてきた自分の努力が、クリニックに行くという行為がばれてしまうことで、無駄に終わってしまうのではないかと考えてしまうのかもしれません。
これは、昔ながらの、こころの病に関する偏見と無理解から来るのでしょう。病気の理解というよりは、精神論でこころの病を定義しようとする傾向があります。メンタルを壊す人は、精神的に弱い人・ストレスがかかるとすぐ身体を壊す人・・のようなレッテルを貼られてしまうでしょう。
実際には、病気のメカニズムは、脳の神経伝達物質の欠如や、遺伝的負因、心理社会的な環境要因など様々な要因が複雑に絡まっています。しかし、世間一般にはびこる「先入観や固定概念」は、なかなか変わりづらいのは確かです。実際に、そのような人は多いですし、治療される本人の中にも、同様の先入観があることも多いです。
そのような先入観の背景には、「病気に対する情報の少なさ」も影響しているのだろうと思います。一般的なメンタルの病気への理解が無いことで、「知らない=変・おかしい」などと考えてしまいがちです。
周囲への変化は難しいですが、まずはあなたと、身近な周りの人(ご家族)だけでもメンタルヘルスの知識を持つことが大事です。
3.自分のことをさらけ出すことを避けたいと考える人
心療内科の治療は、今の症状を治療するために、自分の悩みをさらけ出さないといけないという意識があるのかもしれません。
自分としては、あまり話をしたくない、特にどんな相手かも分からない人に、かなりプライベートな内容について話をすることへの抵抗から、治療自体を断念する場合があるかもしれません。
話したくないことの背景には、これまでの対人関係の中で、「話をしたことによって、更に傷つく体験になった」ということがあったのかもしれません。または、過去に治療歴があり、その時の嫌な体験を引きずっているのかもしれません。
また、自分自身で課題だと考えていることを、ドクターからも、症状の原因だと断定されてしまうと、逃げ場が無くなるような感覚になる方もいらっしゃいます。「どこかでは分かっていたことだけれど、実際にそれを肯定されてしまうことで、逆に苦しい」と感じてしまうことです。一つの可能性だろうなと思っているぐらいが良かったのかもしれません。けれど、断定されてしまうことで、それを改善しないといけないですよと言われているような感覚になるのでしょう。それが、時にはあなたを追い込めるような感覚になるのかもしれません。
心療内科の治療では、現在の症状の話だけでなく、その症状がなぜ起きて、それがなぜ現在も続いているのかを考えます。その時には、症状が起きた背景について話を聞いたり、今の生活状況など、症状以外のことへの聞き取りをしながら治療を進めていく場合があります。確かに、自分が話をしたくないような過去のことについて向き合い、そして言葉にしていくことによって、治療的に進む場合も多くあります。
しかし、話をすること自体が絶対ではありません。まずは症状を改善する為に、お薬などを利用していくことは可能です。
無理な自己開示を求められることもありません。
そこは、それぞれの方の背景やこころの準備もあります。少しずつ主治医の先生との診察を通じて、関係性が出来たあなたのタイミングで、自分の傷つきや引っ掛かっていることについて自己開示していきながら、治療を進めていけば良いので、焦る必要はありません。
4.まとめ
現在、生涯の内でうつ病になる人は、15人に1人だと言われています。珍しい病気ではなく、多くの方がかかる可能性がある病気です。
それにも関わらず、未だに本人の弱さや怠けといった「気持ち次第でどうにかなるもの」という先入観があるのが事実です。
残念ながら、そのような理解が続いていることによって、自分を過剰に責めてしまう人がいるのが事実ですし、その結果、治療に繋がりづらい場合が見られます。
私は、メンタルクリニックに勤めて10年以上が経ちますが、お会いする患者さんの中には、もう少し早い段階で治療に結びつくことが出来れば、ここまで状態が悪くならなかったのではないかと思える方と多くお会いします。
このような状況の問題は、個人の問題ではなく、社会の問題でもあると思います。社会が今よりもメンタルの病気に対する理解を持つことで、早めに治療に繋がることがあると思います。
もし、あなたが少しでも自分の体調に違和感を感じることがあったり、周囲から治療を勧められているとしたら、一度相談に行かれるのも良いかもしれません。
もし、医療に行くことへの抵抗があるようでしたら、カウンセリングを受けてみて、今の状態について第3者から判断してもらうのも良いかもしれません。
いま、オンラインカウンセリングが出来る準備をしています。もしご興味がある方がいましたら、ご連絡ください。