体調不良からメンタルクリニックにかかり、うつ病の診断を受けます。Drからは、1か月程度の休職をしましょうと診断書が出ます。しかし、本人は、「会社に穴をあけると周囲に迷惑をかけてしまう。それを考えると苦しい。だから、仕事は退職しようかと思っている」といった話が、比較的多く話されます。または、そのような相談も無く、既に退職をしたという報告をされるかたもいます。
けれど、そんな時、それはちょっと考え直した方が良いと伝えます。
なぜなら、退職しない方が良い場合が多いからです。
ここでは、なぜうつ病の人が退職しない方が良いのか、5つの理由について説明します。(残念ながら)失敗してしまったような例も合わせて紹介したいと思います。
■ 目次 ■
1.ネガティブな思考が強くなりすぎている
2.転職先に過剰な期待を持ちすぎている
3.ただの回避行動になっている
4.そもそも休職じゃだめなのか
5.職場と交渉しているのか
それでは、1つずつ説明をしていきます。
目次
1.ネガティブな思考が強くなりすぎている
ネガティブな思考とは、将来を悲観的に捉えてしまうことや、自分を責めるような気持ちを指します。
「職場の人に迷惑をかけているから・・・」
「職場の人は、自分なんて必要ないと思っているのだろう」
「どうせ同じ職場に戻っても、体調壊すんだろう」
「そもそもやりたい仕事じゃなかったんだよな」
自分の気持ちが常にマイナスな方向に考えてしまい、明るい未来が描けない状態になります。これは、本人の性格というよりは、うつ病の症状として起きている可能性が高いと考えられます。
うつ病になると、以前のように理性的に物事を考えることが難しくなります。そして、悲観的に物事を捉えやすくなることにより、退職をしないといけない気持ちになりがちです。
症状が安定してくると、もう少し自分のことを客観的に捉えられるようになります。そして、辞めること以外の選択肢を考えることが出来るようになります。その為、悲観的な感情のまま行動に移してしまうことは少し危険です。
退職したことを後に後悔するAさんの事例
Aさんは、責任ある立場で働く中間管理職の方でした。いつも部下のことを心配し、サポートに回ることが多かったようです。その為、どうしても自分で仕事を抱えることが多く、週末まで仕事を抱え、休みも十分に取れない状況が続いていました。仕事量に追い込まれ、先の見通しが持てなくなったAさんは、職場に辞表を出し、「もう無理です・・・」と言い、周りの反対を押し切って退職をしてしまいました。その後、メンタルクリニックにかかると、うつ病の診断を受け治療を続けます。治療を続ける中で、少しずつ当時のことを振り返ると、もう少し人にお願いすることも出来たなと考えることが出来るようになりました。そして、大変ながらも、部下から慕われていたこと・給与面では同世代と比べても高かったこともあって、良かった部分もあることに気づきました。実際に、転職活動を進めてみると、過去のような条件で働ける転職先は無く、どこも怪しいブラック企業ばかりでした。そのような状況になった時、初めて「あの会社は良かったのかもしれないな・・・」と考え、周囲の反対を押し切ってまで退職してしまったことを後悔することになりました。
2.転職先に過剰な期待を持ちすぎている
「新しい所なら心機一転出来るはず」
「嫌な人はいないはず」
「自分がやりたいことを目指すんだ」
そんな風に、転職先には明るい未来が待っているような幻想を抱きがちです。確かに、明るくて良い転職先が待っている可能性は0ではありません。
しかしリスクの方が大きいと思います。
なぜリスクが高いと考えるかというと、新しい環境に慣れて安定して仕事が出来るかどうかはあくまで期待出あって不明です。例えば、新しい仕事になると、1から新しいことを学習する必要があります。新しい人間関係を構築していく必要があります。通勤場所や時間などが変わっていくと、生活全てを変更する必要が出て来ます。
正直、転職先に明るい未来がある保証はないんですよね。
それに、多くの場合、特別な専門性が無ければ、給与が下がる可能性も大です。実は、残るよりも転職をする方が、リスクは高いということを知っておくのも大事です。
3.ただの回避行動になっている
辞めるという行為は、どの程度考えた上での判断でしょうか?
もしかしたら、その職場から回避することだけに、退職を選択しようとしていませんか。
危険な状況から逃げることは大事な防衛方法の1つだと思われます。
しかし、回避行動を選択するということは、次回同じような状況になった時に、すぐに次に移るという選択肢を取りやすくなります。そのまま深く考えずに場所だけを変える方法をとってしまうことで、結果自分の苦しい状態はずっと続いてしまう可能性はあります。
4.そもそも休職じゃだめなのか
退職をする前に、まずは休職という手段を取ることが出来るのでは?と考えます。理由として、休職をしている間は、身体を休めるチャンスです。まずはしっかりと自分の体調を整えることが優先されるべきことです。
また、休職をしている間には、傷病手当金という制度を利用すると、1年半の間、元々の給与の3分の2のお金が支給されます。
身体を休めながらお給料(減額ですが)が貰えるこの時期にちゃんと休息を取り、英気を養い、次の方向性を考えられる土台を作ることを優先する方が、重要だと考えます。
5.職場と交渉しているのか
職場を休職した理由を考えた時、会社の雰囲気や仕事量、人間関係などがあったかもしれません。多くの環境的な要因が重なってしまった可能性があります。
その為、改めて職場と休職の理由を振り返りながら、職場に依頼したいことをリスト化し、交渉してみるのも良いと思います。
例えば、①部署の異動が可能か ②残業時間を制限することが可能か ③パワハラ上司と離れることが可能か などです。
普段の仕事では、なかなか交渉しても取り合ってくれないことが多かったかもしれません。しかしメンタルクリニックで治療中であることや、主治医の先生の診断書があることから、会社も無下にあなたの意見を却下することは減るだろうと思います。まずは、自分の希望を会社と交渉してからでも退職の判断は遅くは無いのではと思います。
■最後に
うつ病の人には、責任感が強く、まじめな性格の方が多くいらっしゃいます。そのような性格傾向からも、周囲に迷惑をかけているような気持ちになったり、自分で様々な責任を抱えてしまうこともあります。うつ病(または、メンタルが不調な時)の場合には、冷静かつ客観的な捉え方が出来ない状態です。まずは、周囲の人に相談をするなどしながら、大きな決断はまず先送りにすることを優先し、治療を進めてみることをお勧めします。先のことは置いておき、まずはゆっくり休んでいくことが大切です。
それでも、どうしても転職を考えている人は、以下の記事も参照してみてください。
※文章内にあるAさんの事例は、特定の人を表しているのではなく、様々な事例を元に作成した架空の人物のお話となります。