うつ病の方の多くに、周囲に自分の悩みを相談したり、相手を頼ったりすることが難しい方がいます。
以前に紹介した「完璧主義」も、その1つになります。
周囲からは、「もっと早くに相談してよ」と言われることもあるかもしれません。
人に頼ったり相談したりすることが苦手なので、ずっと一人で悩んだり苦しんだりすることがあるかもしれません。
今回の記事では、
うつ病の人が人に相談したり頼ったりすることが難しい理由について3つ紹介します。
また、そのような人が改善していくヒントもお伝えします。
このテーマについて私が伝えられる理由は、現在私は、メンタルクリニックで10年以上臨床心理士として勤務し、年間1000件以上のカウンセリングを通して多くのうつ病の方の治療に携わる機会があります。
もしあなたが、頼ることが苦手な人だとしたら、自分の傾向を理解するきっかけになってくれたらと思います。
完璧主義については、うつ病の完璧主義があなたを困らせる【改善策解説】を参照してみてください。
■ 目次 ■
1.うつ病の人が頼れない3つの理由
1.1 自分一人で頑張るべき
1.2 相手に迷惑がかかるだろうと考える
1.3 自分が恥をかきたくない
2.頼れない人への3つのヒント
2.1 相手は自分が想像しているように考えている根拠を考える
2.2 頼ることが相手にもプラスになることを知る
2.3 そもそもそれはあなたが解決出来ることなのかを考える
3.まとめ【頼ることが出来るって実は高度な事なんですよね】
目次
1.うつ病の人が頼れない3つの理由
1.1 自分一人で頑張るべき
自分が困った時に、自分一人で解決すべきだと考える傾向が強いのかもしれません。
人に頼る前にまずは自分で努力するべきという考え方です。
これ自体は決して間違えた考え方では無いですし、何でもかんでも質問したり頼ることが正しいとは限りません。
しかし、この「〇〇であるべき」という「べき思考」は、多くのうつ病の方の考え方に見られます。
べき思考のデメリットは、自分の気持ちや状態よりも、思考が優先して動いている状態になります。
その為、例えば自分が本当に困ってしんどいと身体がSOSを出している時にも、思考でどうにか押さえつけてしまうことがあります。
このように思考が優位に働くことで、こころと身体のバランスが崩れてしまう人が多く見られます。その結果、体調不良になることもあるでしょう。
この「べき思考」は、元々の性格にも関係はありますが、小さい頃の周囲からの躾の影響も考えられます。
親から「人には頼らないで、自分でやりなさい」と教えられた経験があるのかもしれません。
その結果、自分が困った時に「人に相談する/頼る」という選択肢が無くなってしまった可能性も考えらえます。
1.2 相手に迷惑がかかるだろうと考える
自分が相手に相談をすると、相手の時間を奪ってしまうから迷惑だろうと考えて、頼ることを躊躇してしまうこともあるかもしれません。
特に忙しい職場などで、周りがバタバタとしている姿を見ていると、余計に自分が相手にお願いすることは迷惑だろうな・・・と考えて、頼れなくなるかもしれません。
このような考えの背景の1つに、自分に自信が持てないことがあります。
自分が困っている時に、相手に相談しても良いと思えるには、「自分には相談をする権利があって当然である」という当たり前の感覚が持ちづらいのかもしれません。
「私なんかが、周りの人の手間をかけるなんて・・・」と自分が当然受けても良いサポートを自ら放棄してしまうことに繋がってしまいます。
また、自分が相談されたり頼られたことがしんどかった経験があるのかもしれません。
例えば、小さい頃から情緒が不安定な親の相談役になっていたような人がいます。親の相談役になることは、親のサポートになることもあるでしょうが、正直しんどいな・・・迷惑だなと考えた気持ちがあったかもしれません(そう考えてはいけないと自分の中で押し殺していたこともあったかもしれません)。
このような、自分が相談を受ける側の立場に立たされていた経験の中で「しんどいな」と感じていたことを、相手も同じような気持ちになるのでは想像することは容易なことです。
特に、周囲の気持ちに敏感に察知してしまう傾向のある方なら尚更です。
自分がされて嫌だったことは、人にはしたくないな・・という気持ちから、自分が頼れなくなることに繋がることもあるでしょう。
1.3 自分が恥をかきたくない
人に頼ったり、相談をすることは、とても格好が悪いし恥ずかしい行為だと考えている人もいます。
自分が出来ないことを人に見られることが嫌なので、それを隠そうとする行為が、頼らないという行動に結びつきやすいのかもしれません。
このような考え方の背景の1つに、とても傷つきやすい繊細な気持ちがあるのかもしれません。
一見、そのような繊細さは姿を見せず、プライドという言葉に表現されるような、「自尊心や誇り」のような形で姿を現します。
周囲から失敗を笑われたり、何気ない周囲からの一言に対して、とても傷つきやすくダメージを引きずりやすい繊細さもあります。
しかしそれを強がって見せることや、頼らないという方法で、これまで対処してきた可能性があります。
また、臨機応変に対応することが苦手な人にも多く見られます。
うまくいかない時には、別の手段に方向転換をしたり、相手の言葉に耳を傾けて、自分のスタンスを変えられるような柔軟さを持つことが難しいのです。
その為、頼れないというよりは、周囲からのアドバイスを受け入れられない状態が起こります。
自分のやり方のまま進んでいくことで、困難状況を乗り越えようと努力すればするほど、うまくいかないという悪循環に陥り、結果的にしんどくなることがあります。
2.頼れない人への3つのヒント
2.1 相手は自分が想像しているように考えている根拠を考える
頼れないことの理由の一つに、相手も迷惑だと考えるだろう・駄目な奴だと思っているだろうと想像してしまうことを説明しました。
しかし、あなたはそのように想像をしていますが、
実際に相手はどう思っているのでしょうか?
相談されることが迷惑だと考えているのでしょうか。
どうしようもないやつだと思っているのでしょうか。
相談されることが迷惑だったり格好悪いと考えているのはあなたの想像だけで、実は、「もっと早く相談してよ」「分からないことがあったら言ってね」と言われている場面は無いでしょうか。
実際に、否定されていないことも、あなたの中で想像して作っている世界観があるのかもしれません。
過去の体験が消化出来ず、今でも生き生きとあなたの中に残り続けていることもあります。つまり、過去に遡って親から言われた言葉や態度を、どうしても目の前の人にも見てしまうということです。
意識レベルでは、そのようなことは無いのでしょうが、潜在的(こんな言い方をすると怪しいと思われるかもしれませんが)には繋がっている可能性があります。
相手に改めて聞いてみても良いのかもしれません。
そして、相手の言葉の裏のメッセージではなく、言葉通りに受け止め、それを実行してみる機会を持ってみるのも良いかもしれませんね。
2.2 頼ることが相手にもプラスになることを知る
頼られるという行為が、人にとってマイナスのことだと考えているとしたら、違う側面もあるということを知っておくことも大事です。
人は相手から頼られたり、困っている状況に対して自分が出来ることに、幸福感を感じます。
そして、相手の笑顔や安心した顔を見ると、自分が認められたような気持ちになって、心地よさを感じることでしょう。
当然、忙しい時に声をかけられたら「面倒だな」と考える瞬間はあるでしょう。けれど、それが全てではないということです。
自分自身の経験を想像してみても良いでしょう。
困った時に自分を頼りにしてくれる存在、それが友達だったり、職場の後輩だったとしたら、手を差し伸べることがありませんか?
その人の為に何かをしようと思って、時間を割くこともあるし、それによってもたらされた「なんか良いことできたかな」という体験は、あなたの中で、良いものとして残ることもあるのではないでしょうか。
よくお会いしている方の多くに、「自分がサポートする分にはいくらでも出来るのに、人にサポートしてもらうのが苦手」とお話される方がいます。
相談するという行為が、相手に迷惑をかけるという理解ではなく、「相手に心地よい時間を提供している」といった考えを持っていることも大切かもしれません。
2.3 そもそもそれはあなたが解決出来ることなのかを考える
あなたが困っている悩みの中身について考えてみます。
それは、自分で解決できる悩みなのか、
それともあなたの裁量ではどうすることも出来ないことを悩んでいるのかについて考えることも大切です。
悩みの中には、自分で解決出来ること・人の手を借りれば解決出来ること・人の手を借りても出来ないことがあります。
何かを頼るという行為は、「自分で解決できること(今は少し難しいが)」と「人の手を借りれば出来ること」の2つに限られます。
「人の手を借りても出来ないこと」を色々と悩んでいたり、それを上司や同僚に相談をすることは、少しポイントがずれてしまっています。
頼る方法も模索することも1つですが、頼ることで解決することが可能なのかを考えてから相手に相談することを判断しても良いかもしれません。
3.まとめ【頼るって実は高度なことなんですよね】
人に頼れば良いじゃんと言われることがあるかもしれません。
けれど、それが難しいから困っている人からすると、そう簡単ではないと考えるでしょう。
実際に、人に頼る行為とは、ここでも紹介した様に、さまざまな障害となる要因が考えられます。
それは実際の障害というよりは、こころの障害の部分が大きいでしょう。
その為、自分のこころとの付き合い方が大切になってきます。
出来るようになってくると、自然に相手に自分の弱さも見せられるようになりますし、頼ることに対してネガティブな感情を持ちにくくなるでしょう。
具体的な頼み方の方法については、うつ病の人が職場で仕事を頼みやすくする方法【臨床心理士が解説】を参照してみてください。