最近職場の部下がとても疲れて元気が無いんです。
もしかしたらうつ病かもしれないと思うのですが、どう接したら良いのか分かりません。
気をつけないといけないポイントなど教えてください。
このような質問にお答えします。
この記事を読むことで、
この記事について
✅ うつ病の部下へ接し方が分かる
✅ うつ病なのかな?という判断ポイントが分かる
記事を書いている人
メンタルクリニックで10年以上臨床心理士として勤務し、年間1000件以上のカウンセリングを通して多くのうつ病の方の治療に携わる機会があります。また、休職者を対象にしたリワークデイケアにて復職のサポートを7年以上行っています。
うつ病の人への関わり方には配慮が必要だと言われています。
しかし、何を配慮して、どこまで上司として関わるべきなのかは難しい問題です。
ここで紹介することが、今日からの関わり方へのヒントになれば幸いです。
目次
うつ病の部下に接する時に重要な5つのポイント
【うつ病の部下の話を聴く姿勢】伝えること2割 聞くこと8割
うつ病の部下に接する際の難しさに、どうしてあげることが本人にとってプラスになるのかが分からない場合が多いと思います。
何に困っているのか?
どうして欲しいと思っているのか?
上司として出来ることなら何かサポートをしてあげたいと思っているはずです。
うつ病になる人の多くは、問題を一人で抱え込みやすく、あまり相談をしてこない方が多いため、余計に分からないことも多いかもしれません。
まずは、相手の状況を聞くことを優先しましょう。
何かをするにしても、部下の状態が分からなければ、出来ることは分かりません。
部下にとっても伝えることへの躊躇があることも多いので、話を聴くことを意識してみましょう。
【うつ病の部下の話を聴く内容】情報収集ではなく、部下の体験を聞く
部下の話を聞く際に大切なポイントは、事実関係を把握することではなく、部下がどのような気持ちになっているかを聞くことです。
部下が話し始めた時に、場合によっては事実とは違っていることや、部下の捉え方が極端にマイナス思考になっている場合もあります。
そのようなズレを見つけた時に、「いや、周囲は別に君のことを無視していないよ。君の勘違いだよ」と否定したくなるかもしれません。
しかし、事実はどうであれ、部下が体験している世界を知ろうとすることが大切です。
「あー、自分のことを周囲が無視しているように感じて、一人で苦しくなっていたんだね。それを一人で抱えて悩んでいたんだね。」
と部下の体験している世界にまずは一緒に入り、「それは困ったね。」と共感してあげることが大切です。
部下にとっては、上司が自分の気持ちをまず受け止め、理解してくれたことに安心するでしょう。
そのような安心感を持つことで、より部下があなたに話しかけやすくもなるでしょう。同時にあなたの話を聞く耳を持つようになるでしょう。
【うつ病の部下に伝える事】休むこと・治療をすることの必要性を分かってもらう
うつ病の治療として、真っ先にやるべきことは、「ゆっくり休むこと・お薬を飲むこと・ストレスから離れること」です。
これは、どの方に対しても共通項目となります。
部下の不調が分かった時点で、まずは有給休暇などを使用しながらお休みをとることを提案するのも良いでしょう。
身体を休めることで、気持ちがリフレッシュ出来るのか、または調子が回復しないのかによっても、その後の治療の必要性の有無が分かります。
まずは、「ゆっくり休む」を最初に行うことが大切です。
しかし、そこには難しさがあります。
1つは、上司であるあなたが、その必要性を理解しておくことです。
もう少し頑張れるのではないか・この仕事が進まなくなる・甘えているのではないかという気持ちが湧いてくるかもしれません。
思わず、叱咤激励してしまうかもしれません。
しかし、叱咤激励して少しの間頑張れたとしても、恐らく長続きはしないでしょう。
長期的に考えると、一旦しっかりとメンタルを整える方が、目先の仕事よりも大切なことがあります。
別の難しさには、本人がお休みを取る必要性を感じていない場合です。
「全然問題ありません」
「自分が抜けたら大変でしょう。最後まで頑張ります。」
などと頑張ろうとする部下がいます。
自分の体調不良にきづいていないか、気づかないようにして頑張ってしまう人です。
このような場合には、あなたの権限で、ある程度制限をかける必要があります。
本人の希望に沿って行うことだけが大事な事ではありません。
「君は自分が何とか出来るだろうと考えているのかもしれないけれど、私は、あなたがこのまま今の状態を続けていくと、体調が悪化することをとても心配しているんだよね。だから一度心療内科を受診してみよう」
と声をかけてみるのも良いでしょう。
部下がうつなのかな?と感じた時には、こちらの記事を参照してみてください。
【うつ病の部下との話し合いの終わり方/続け方】いつでも相談乗るよ
一度の話し合いだけでは、部下も本音を話すことに躊躇する場合があります。
話し合いは1回で終わらせず、繰り返し話し合いをすることが大切です。
その際に、「いつでも相談乗るよ」と伝えておくことは重要です。
いつもあなたが部下に対して開かれている存在であることを伝え続けます。
いつでも相談に乗る姿勢とは
- 挨拶はあなたから行う
- 時折声をかけ、困っていることが無いかを聴く
- 雑談をする
- 暇そうにしている
- 定期的に面談の時間を持つ
話しかけやすい雰囲気を作るためには、接触する機会を増やすこと・あなたにゆとりがあることが大切です。
実際には、部下からあなたに話を持って行くことは難しいことが多いでしょう。
特に、仕事の話ではなく自分の体調の話だとしたら余計に遠慮がちになるでしょう。
定期的に話し合いの場を設けるなどして経過や現状の把握を一緒にすることをするのも良いでしょう。
【うつ病の部下への仕事の配慮】量や質への配慮は重要。けれど、特別扱いはしない
うつ病を患い、休職後に復職をしてきた部下に対しては、一定の仕事への配慮や制限が必要になります。
具体的には、残業を制限する・出張や夜勤などの業務は行わない、などです。
統計的には、復職後5年間で、うつ病を再発する確率は、約2人に1人と言われています。
復職後も、定期的な面談は必要となります。
しかし、無制限に特別な配慮を続けることも問題です。
仕事が忙しくなりすぎるのも問題ですが、仕事が無い状態もストレスになります。
「自分は必要とされていない」「みんなが腫物に触るような態度を取っている」などと感じることがあります。
会社への所属感を持ちづらくなることがあります。
また、特別な配慮をし過ぎると、その負担が他のスタッフに負担が大きくなると、「なぜあの人はいつまでも特別扱いされているのだ」と不満が出てくることもあるでしょう。
一定期間の配慮は必要ですが、それ以降は通常の仕事量に戻していくことは大切です。それでも調子が回復しないようなら、配置転換などを含めた環境調整や、産業医の面談や、心療内科のドクターに相談をすることも大切かもしれません。
うつ病の部下への接し方のまとめ
うつ病の部下への接し方、5つのポイントは、
うつ病の部下への5つの接し方
- 伝えること2割 聞くこと8割
- 情報収集ではなく、部下の体験を聞く
- 休むこと・治療をすることの必要性を本人に分かってもらう
- いつでも相談乗るよ、のメッセージ
- 仕事の量や質への配慮は重要。けれど、特別扱いはしない
上司の立場として、部下に寄り添う関わり方が出来るだけで、部下の気持ちはとても楽になるでしょう。うつ病の治療は一進一退があります。時には、我慢をしたり、時には待ってあげることも必要な場面もあるかと思います。
今回ご紹介したヒントが、今後の部下との関わりにお役に立てれば嬉しいです。