メンタルクリニック通院手引き

失敗しない復職にはリワークデイケアへ行こう

リワークデイケア

 

メンタルの不調により、職場を休職する人の数が増えています。初めてメンタルクリニックに通院し、治療をしながら復職を目指す人もいれば、何度も休職と復職を繰り返す人がいます。復職を目指す時に、多くの人は「元のようなエネルギーが戻ったら復職できるはず」と考えています。

 しかし、これは大きな間違えなんです。復職をするときに、体力が回復するのは、必要な条件ではありますが、それが全てではありません。なぜかと言うと、体力が回復しただけでは、元に戻ると、また繰り返す可能性が非常に高いからです。復職後に再休職になる人の確率は、復職後3か月で30%近いと言われています。10人の内3人が再休職になるということです。この理由としては、十分な体力の回復に至っていなかった可能性は当然ありますが、それ以外にも「なぜ自分が休職に至ったのか」「その原因となることが復職後には変わっているのか?または変わっていないのなら、その対処方法は予め用意できているのか」などといった、復職するための準備です。自分の状況を十分に振り返り、分析して、対処を検討することをしないまま復職をしてしまうことによって、繰り返してしまう可能性があります。

では、どうしたら良いのでしょうか?メンタルが不調の中、一人もんもんと自分に向き合って考えることはとても難しいと思われます。状況を客観的な視点で振り返ることや、対応方法について知ることは大切です。その為、復職をすることに特化した場所「リワークデイケア」を利用することで、一人で放置されてしまいがちな課題の整理を効率よく進めることが出来るようになります。ここでは、失敗しない復職を目指すことを目的に、リワークデイケアをお勧めします。メンタルクリニックにてリワークデイケアの立ち上げから運営に関わって10年目の私から、皆さんにご紹介したいと思います。

ここでは、リワークデイケアがどんな場所なのか?どのような受けるメリットがあるのかについてご説明します。

 

1.リワークデイケアとは?(目的/対象/時間/料金/)

2.リワークデイケアで何をするの?(1日の流れ/プログラムの紹介)

3.リワークデイケアってどう選べばいいの?

4.まとめ

では、さっそくご紹介していきましょう。

 

1.リワークデイケアとは?

リワークデイケアとは

目的:メンタルの不調によって職場を休職されている人が、職場へ復職することを目的に、定期的に通所する場所です。目的は、大きく分けると3点あります。

「病状を回復・ 安定させること」:メンタルの不調には波がありますが、その波を最小限に抑え、病気によって生活が大きく振り回されることなく安定して日々の生活を送ることが出来ることを目指します。安定していくことで、気持ちにも余裕が出て来ますし、何より自分がまた出来るといった前向きな気持ちにもなれます。

「復職準備性を向上させること」:復職をしていくにはたくさんのハードルがあります。

http://kokoro.mhlw.go.jp/brochure/supporter/files/H25_Return.pdf

上記のリストは、職場側が復職する人に求める準備となります。しかし、上記以外にも、ストレスマネージメントの方法や、自分の体調不良のサインに気づくことなど様々です。

「再発防止のためのセルフケア能 力を向上させること」:復職がゴールと考えやすいですが、復職することはある意味「再スタート」と考えます。スタートを切って意気揚々と進められれば良いのですが、やはり仕事を続けていく中で、様々なストレスが出て来ます。その時に、体調が悪化して再休職にならない為に、出来る工夫を知っておくことが大切です。

対象:休職中の人。うつ病の人だと回復期(日常生活のリズムが少しずつ整い始め、日中の活動はある程度行うことは可能。少しずつ復帰に向けて動けるようになっているが、何をしていったら良いのか分からない)にあたる人。年齢による制限はありません。20代から60代まで男女を問わず、様々な人が幅広く利用されています。

時間:6時間程度 10時~16時ぐらいの所が多いようです。その時間を他の人と一緒に過ごせるぐらいの体力が必要になってくるので、ある程度体調として回復してからでないと、利用することが難しいと思います。

料金:800円程度(自立支援制度を利用の場合)(お昼ご飯が含む)。自立支援制度を利用すると、負担金1割+支払い上限があります(所得によって違いあり)。その為、仮に週5日、1か月利用した場合には、800円×5日×4週間=16000円となりますが、上限1万円の人だとすると、1万円を超えたら実質0円で利用が出来ます。(自立支援制度など、お金に関することは、<重要>精神科通院を助けてくれるお金に関する5つの方法を参考にしてください。)その為、料金的にはかなり抑えられているので、とても費用対効果の高い時間を過ごすことが出来るのではないでしょうか。

 

2.リワークデイケアで何をするの?(1日の流れ/プログラムの紹介)

リワークデイケアでなにするの?

■1日の流れ

リワークデイケアの1日(参考)
時間 プログラム内容
10:00 朝のミーティング
10:15 午前中のプログラム
12:00 お昼ご飯/休憩
13:00 午後のプログラム
15:00 1日の振り返り/清掃他
16:00 終了
一例です。デイケアによって時間割は変わります

 

 

 

 

リワークデイケアの1日の流れはおおよそこのような形になる所が多いかと思います。お昼休憩を挟んだ前後に各種プログラムがあり、その内容が曜日または、その方の復職段階によって変わってくると思います。

■プログラムの紹介

リワークデイケアでは、様々なプログラムが用意されています。個別に取り組むようなプログラムからグループワークのように、利用されている方同士がコミュニケーションを取りながら進めていくプログラムがあります。目的が「復職」であることから、居場所型デイケアに見られるような、クッキングや外出(買い物)などのようなプログラムは少ないことが特徴です。

◎オフィスワーク
 職場での働いている環境に似せて、パソコンを使った個別作業の時間。それぞれが課題を設定し、作業に取り組みます。回復段階にもよりますが、自分の好きなものを調べてまとめ、発表する機会を持つこともあります。また、復職近くになってくると、仕事内容に近い分野についてまとめ作業を行うこともあります。決められた時間内に作業を遂行することを目指すことが目標になる方もいれば、適宜自分の体調に合わせて休憩を取ることを練習する人がいるなど、同じプログラム内でも、それぞれの方の課題に練習を行う場になっています。

◎ボディーワーク
 普段身体を動かす機会が減っているので、少しずつ身体を動かすことを始めていきます。他の方と一緒に卓球をしたり、ダンスをして過ごす時間は、身体だけでなくこころもリラックスし、自然と笑ったり楽しんだりすることが出来るようになります。

◎生活のリズムを整える
 毎日の活動内容について、時系列で1週間の流れとしてまとめます。グループでそれぞれの生活報告をシェアしながら、今週の目標と照らし合わせて良かった点・頑張った点・もう少しこう出来たら良いななどについて話し合い、翌週の目標にします。

◎アサーション
 アサーションとは、相手の気持ちだけでなく、自分の気持ちにも開かれたコミュニケーションスキルの方法です。休職に至る理由の一つに、職場の人との人間関係やコミュニケーションの難しさが多く見られます。仕事を断ることが出来ずに一人で抱え込んでしまう人や、逆に強い言い方をしてしまうことで、周囲との距離が出来てしまう人などがいらっしゃいます。アサーションを学ぶことによって、自分の考えていることを相手に伝わりやすい方法で伝えることが以前よりやりやすくなります。

◎集団認知行動療法
 認知行動療法とは、物事は原因→結果として起きているだけではなく、その人それぞれの捉え方によって変化していくという考え方を元に、自分の認知と、行動について考えていく心理療法となります。自分の考え方の癖を知ることを通して、極端では無く、職場の実態に合わせた考え方が持てるようになったり、自分の中に行動の選択肢をいくつか持てるようになることで、気持ちにゆとりが持てるようになります。集団で行うことによって、人との違いを知る機会にもなると共に、同じようなことで困っていることを知れることにより、ポジティブな意味での安心感(ひとりじゃないんだ)を持てる機会にもなります。

 

3.リワークデイケアってどう選べばいいの?

リワークデイケアどう選ぶ?

 

◎現在通院中のクリニック
 現在通院されているクリニックに、リワークデイケアがあるとベストです。クリニック内で、デイケアと診察の両方が可能になるため、通いやすいと思います。通い続けることが大事なので、なるべく負荷がかからないように近場から始められるのは大切です。また、デイケア職員と主治医が情報共有をしやすくなる為、連携が取りやすくなると思います。

◎主治医の先生の勧め
 昨今、多くの企業では、復職をする際にリワークデイケアに通うことを推奨するケースが多くなっています。その為、主治医の先生の多くが、他院のデイケアや、地域の障害者支援センターのリワークデイケアを利用した経験があります。その為、主治医の先生に相談し、関係性と実績のあるデイケアを紹介してもらうのも良いでしょう。

◎日本うつ病リワーク協会
一般財団法人日本うつ病リワーク協会は、全国にあるリワークデイケアをまとめる団体で、多くの施設が協会に所属しています。その為、お住いに近くのリワークデイケアが無いかチェックして、問い合わせをしてみても良いかもしれませんせんね(HP: 日本うつ病リワーク協会

■まとめ

リワークデイケア

 

メンタルクリニックに通うきっかけの一つには、体調不良により仕事にいけなくなってしまったといった現実的な生活の困難が多くあります。休職をしてしまうと、経済的な面への不安や、社会活動から孤立してしまったような気持ちになる方も多いです。しかし、実際に薬だけで体調を整え、復職の準備を行い、復職にこぎつけるというのは、並大抵のことではありません。今回紹介したリワークデイケアでは、概ね3か月~半年ほどかけて、復職への準備をされる方が多くいらっしゃいます。もしかしたら、「そんなにかかるの?」と驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には、復職をすること・安定して仕事を続けることというのは、とても難しいことなんです(だから普通に仕事をしていることって、すごいことなんです!)。

リワークデイケアとは、改めてこれまでの働き方を考えるきっかけにもなる場所になります。この先長い人生を送る上で、少しの寄り道は必要なのかもしれません。もし、復職を考えている方の参考になれば嬉しいです。

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