メンタルクリニック通院手引き

うつ病の人の思い込みに振り回されない為に【微小妄想について臨床心理士が丁寧に説明】

 

 

 

精神科病院通う?

うつ病の人の思い込みがあるってどんなこと?

なぜ思い込み(微小妄想)が起きるの?

思い込みを治すにはどうしたら良いの?

 

 

この記事で知れること

・うつ病の3つの思い込み(微小妄想)について知ることが出来る

・うつ病の思い込み(微小妄想)の原因を知ることが出来る

・うつ病の思い込み(微小妄想)の治療について知ることが出来る

 

この記事を書いている私は、メンタルクリニックで10年以上臨床心理士として勤務し、年間1000件以上のカウンセリングを通して多くのうつ病の方の治療に携わる機会があります。

思い込みがあることで、うつ病の本人も、周りのご家族も、その思い込みに振り回されてしまうこともあり疲れてしまったり、余計にネガティブな気持ちになることもあるでしょう。

この記事を通して、うつ病の人の思い込みとの付き合い方について知れたら幸いです。

 

目次

1.うつ病の人の思い込み 3つの微小妄想とは【事例あり】

 1.1 心気妄想(健康に対する不安)

 1.2 貧困妄想(お金に対する不安)

 1.3 罪業妄想(自分が行ったことへの不安)

2.思い込み(微小妄想)の原因

 2.1 うつ病の症状である

 2.2 完璧主義や自分に厳しい性格傾向

 2.3 本来の不安の置き換えとなっている

3.思い込み(微小妄想)の治し方

 3.1 ご本人への治療について

 3.2 ご本人のご家族の関わり方について

4.まとめ【本人も家族も振り回されます】

 

 

1.うつ病の人の思い込み 3つの微小妄想とは【事例あり】

微小妄想

 

うつ病の思い込みの中には3種類あります。どんなものがあるのかここで紹介します。

 

1.1 心気妄想(健康に対する不安)

 

自分が病気になっているのではないかという不安が高くなります。

些細な身体の変化に対してとても敏感になり、それが病気のせいであると考えてしまいます。

 

各種検査結果は異常が無いとドクターから言われても、「ドクターが間違えている可能性がある」と考えて、別の病院に行くといったドクターショッピングをすることがあります

 

ポイント

事例:自分が心臓病になってしまったのではないか考えるAさん(架空)

Aさんは、テレビで心臓病の特集を見ました。その時から、少し動悸が出てくると、「これは心不全ではないか」「このまま動悸が止まらずに死んでしまう病気なのではないか」と気になり始めます。ネットで「心臓 動悸」を検索すると、様々な症状の情報を見つけ、不安がどんどん強くなっていきます。一度病院に行って精密検査をするも異常は見られなかったのですが、その検査結果が信じられず、他の病院を転々とします。不安も高くなり、動悸がする機会が増えてくると、より一層自分の症状が心臓の病気のせいだと考え、思い込みが強くなります。

 

1.2 貧困妄想(お金に対する不安)

 

お金をある程度稼いでいるにも関わらず、自分が今後貧乏になって、食べていけなくなるのではないか・家族を養うことが出来なくなるのではという不安が強くなります。

 

現実的な家計簿を見せても納得できず、「もし自分が怪我をして働けなくなったらどうする。もし大病を患って、治療に何百万とかかってしまったら、家庭は壊れてしまうなどと考え、それが今起きてしまったかのように考えて落ち込んでしまいます。

 

ポイント

事例:自分が貧乏になってしまうと考えるBさん(架空)

一定の収入を得ながら生活をしていたBさんは、うつ病により3か月ほど休職状態となりました。その間は、傷病手当金を支給されている為、支給額は減っているものの、Bさんの家族はなんとか生活をしていくには問題なかったのですが、このまま休職から戻れなくなったらどうしようという気持ちが日に日に強くなりました。最終的には、貧乏で、飯も食えなくなって死んでしまうのではないかという将来を想像し、現実化すると思い込んでしまいます。

 

1.3 罪業妄想(自分が行ったことへの不安)

 

自分が過去に行ったことを過剰に後悔したり、自分を責めるような気持ちが強くなってしまう状態です。

 

そのような事実が実際にあったかもしれないのですが、もう10年以上前に起きた出来事だったりします。

周囲からすると一見たいしたことではない出来事に固執して思い込んでしまいます。

 

ポイント

事例:過去に相手を許せなかった自分を責め続けるCさん(架空)

自分に今起きているマイナスな状況は、自分が過去に犯した罪のせいだと考えています。その罪とは、20年以上前にお付き合いしていた男性に対して、喧嘩別れをしてしまったことについて。相手が浮気をしたことを当時の自分は許せず、相手が謝罪して付き合いを続けたいと懇願したにも関わらず、自分は許せずにお別れをした。そのような自分のこころの狭さが今の自分の不調に繋がっているんだと考えてしまいます。その為、自分は今後幸せになることは出来ないだろうと思い込んでしまいます。人によっては、自分の存在を否定したり、現在の人間関係からも離れないといけないように考えてしまいます。

 

2.思い込み(微小妄想)の原因

微小妄想原因

2.1 うつ病の症状である

 

それぞれの思い込みは、うつ病の症状から起きているものです。

将来への悲観的な考え方がとても強くなっていく為、思い込みも強くなります。

 

極端な考え方だなと自分で自分を客観的に捉えることは難しく、それが真実だと疑わない状態になります。

 

 

2.2 完璧主義や自分に厳しい性格傾向

 

起きている問題に対して、全ての原因を自分のせいだと考える傾向が強い方が多いようです。

 

出来事の要因は様々なことがあり得るという考え方が持てず、「自分がもっとちゃんとすれば、このような問題は起きなかったはずだ」と考えて、自分を責めてしまいます。

 

周囲からすると、そんなことないのに・・・と思えるような内容についても、信じて疑わない状態になります。

 

 

2.3 本来の不安の置き換えとなっている

 

本人が認識している不安な気持ちは、実は本来本人が不安に考えているものとは別のものであり、置き換えになっている場合があります。

 

本当なら向き合わないといけない不安があるにも関わらず、そこに向き合うにはあまりに辛い場合に、「別の不安を不安だと考えることで、本来の不安から回避する」といったことが起きている可能性があります。

 

 

3.思い込み(微小妄想)の治し方

微小妄想治療

3.1 ご本人への治療について

 

基本的には、うつ病の治療が基本になります。

 

薬物療法と心理療法をセットで行うと効果的です。ここでは、心理療法におけるワンセッション(架空)をご紹介します。

 

心理療法事例(架空)

自分が心臓病になってしまったのではないか考えるAさん(架空)

Aさんは、テレビで心臓病の特集を見ました。その時から、少し動悸が出てくると、「これは心不全ではないか」「このまま動悸が止まらずに死んでしまう病気なのではないか」と気になり始めました。ネットで「心臓 動悸」で検索をすると、様々な症状の情報を見つけ、不安がどんどん強くなっていきました。一度病院に行って精密検査をするも異常は見られなかったのですが、その検査結果が信じられず、他の病院を転々とすることが続きました。不安も高くなり、動悸がする機会が増えてくると、より一層自分の症状が心臓の病気のせいだと考え、思い込みが更に強くなりました。

Aさんの不安はなかなか収まらず、他の身体の不安まで強くなってきました。心理療法にて、心臓病になることへの不安を言葉にする作業を続けていきました。すると、何回目かのセッションで、実は自分が幼い頃に、父親が心臓発作で突然他界したことを語りました。小さい頃からパパっ子だったAは、父親の死を受け入れることが出来ませんでした。残された家族は、父親の死を悲しむことも考えることも出来ず、毎日必死に生活をしていたことを振り返りました。テレビで心臓病の映像を見た時に、父親が布団の上で苦しそうにしている時のことがフラッシュバックのように蘇り、自分がとても怖くなってしまったようです。Aさんは泣きながら過去の感情について語り、自分がもっと頑張れば父親が死ななかったのではないかと自分をずっと責めていた自分がいたことが分かりました。

少しずつですが、父親のことについて話し合いをしていくと、父親の死を過去のこととして体験できるように気持ちの整理が出来て来ました。すると、徐々に思い込みのような症状も減ってきて、「自分でもあの時はどうかしていた・・」と過去の体験を振り返るぐらいまで変化をすることが出来るようになりました。  

                           

 

3.2 ご本人のご家族の関わり方について

 3.2.1 本人の話を否定しない

 

家族にとって、あまりにもおかしなことを言っている場合も、強く相手を批判することは避けましょう。

 

本人にとっては、真実のように感じているので、正論で返しても、本人は納得することは無いでしょう。

 

家族から話された内容よりも、その否定的な言い方だけが頭に残り、その後周囲に対してSOSを出しにくくなります。

 

 

3.2.2 本人の話を肯定もせず、聞き流す

 

うつ病の方の思い込みに見られる微小妄想は、全く根拠が無いような妄想(統合失調症の方が訴えるような妄想「宇宙人が自分を狙っている」)といったものではなく、極端ではあるけれど、多少現実の事実も繋がっているものが多くあります

 

しかし、本人の話を肯定し、受け止め続けてしまうと、その妄想が固定化され、それが真実であるという形で、認識が強化されていく不安があります

 

繰り返し本人がその話をして来ても、あまり話を広げずに聞き流す程度の対応が良いのではないかと思います。

 

 

4.まとめ【本人も家族も振り回されます】

家族も巻き込まれます

 

うつ病の人の思い込みについて説明をしました。

 

うつ病の人の微小妄想は、人によって程度の差はあると思います。

 

強い妄想的な思考が強くなってきた場合、本人だけでなく、周囲の家族も巻き込まれていく場合があります。

 

周囲からの言葉かけはほとんど入らず、その代わり、自分のことを分かって欲しいという願望は強くなります。

その為、家族も巻き込んで皆が不安感に振り回されてしまう場合も多く見られます

 

 

状態の波はありますが、うつ病の治療は少しずつ良くなっていく病気です。

主治医の先生やカウンセラーと相談をしながら治療を進めていきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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