こんな質問にお答えします。
とりあえず行ってみようと考えて始めたカウンセリング。
今後どのように進んでいくのでしょうか?
進め方については、問題の質やあなたの状態によって変わってきます。カウンセラーごとに専門とする心理療法の違いにも影響を受けます。
かと言って、よくわからない事で不安に感じてしまうこともあるでしょう。
ここでは、私がお勧めするカウンセリングの流れを紹介しますね。
こんな方におすすめ
- これからカウンセリングを始めようと思っている人
- カウンセリングの流れやペースを知りたい人
この記事を書いている人
メンタルクリニックで10年以上臨床心理士・公認心理士として勤務し、年間1000件以上のカウンセリングを通して多くの患者さんの治療に携わる機会があります。また、私自身も3年以上カウンセリングを受けています。カウンセラーとしてもカウンセリングを受ける立場としても、今回の質問についてお答えすることが出来るでしょう。
目次
私がお勧めするカウンセリングの流れ
カウンセリングの流れ
- 初回の面接
- アセスメント面接(計3回)
- アセスメント結果/目標設定
- 継続面接
- 終結
- フォローアップ(終結の後、約3か月程度:1回)
それぞれの段階について説明しますね。
初回の面接
✔ 現在起きている問題を確認し、整理をする
✔ カウンセリングの期待や目的について話す
✔ 今後の流れや頻度について決める
初回の面接では、現在起きている問題についてお話を伺います。
どのような場面で、どのような困り感を感じているのか。どれぐらい問題が続いているのかなどについて話をします。あなたがこれまで工夫をして取り組んできたことも聴いていきます。
カウンセラーから質問をしながら、問題を整理していきます。
面接の最後に、カウンセラーが現在の状況を整理、まとめた上で、カウンセリングの目的について話し合いをします。
アセスメント面接
1回でお話を整理し治療方針を立てることは難しいと思います。
その為、3回に分けて「アセスメント面接」を行います。目的は以下の通りです。
✔ あなたの抱えている問題を分析して治療方針を立てる
✔ あなたがカウンセリングを体験し、自分にとって必要かどうかを判断する
✔ カウンセリングを生活の一部に取り込んでいく
あなたの抱えている問題を分析して治療方針を立てる
あなたが抱えている問題がなぜ起きているのか?そしてなぜそれが続いているのか?について考えていきます。
確かに、問題の整理は一部出来ています。
ただし、その問題を治療していくには、より詳細な情報や、その問題の背景を考える必要があります。
例を挙げて考えてみましょう。
職場の上司のパワハラが理由で、気持ちを沈んでしまっている。何も考えられず、仕事も手に付かない。
こういった状況や問題があったとします。
では、ここから何を考えていけば良いでしょうか
職場の上司ってどんな人?あなたに何を期待し、何を期待していないのか?
職場の他の上司との関係は? 職場のサポート体制はどんな感じ?
なぜその上司の言葉に、それほど気持ちが沈んでしまうのか?
あなたにとって、どのような体験になっているのか
同じような体験が過去にあったのか?
過去の体験は、どのような影響をあなたに与えているのか?
あなたが知らず知らずに相手に行っている迷惑な行為はないだろうか?
職場での仕事のパフォーマンスはどうなのか?
気持ちが沈んでいる時の行動とは?
それ以外の行動を行った時の身体の調子は?
あなたのポジティブな側面とは?
・・・・・
・・・・・
今起きている状況を理解する為には様々な視点で考える必要があります。
話をしていく中で、自分の事を理解するきっかけにもなります。
治療の仕方も変わってきます。
先ほどの相談を受けて、単純に
「ひどい上司ですね。すぐに第3者委員に相談をしましょう」
「体調が沈んでいるのは、うつ病の始まりです。心療内科へ受診しましょう」
とはなりません(こういうカウンセラーも多いですが)。
しっかりと時間をかけて問題整理をすることにより、効果的な治療方針を決めていく土台作りをします。
カウンセリングを体験し、自分にとって必要かどうかを判断する
カウンセリングを体験することが初めての方も多いと思います。
期待と不安があって始められる人もいます。
アセスメント面接を数回受けながら、カウンセリングをまず体験しましょう。
自分にとって、意味がある時間になりそうかな?
カウンセラーは自分に合っている人なのかな?
自分の事を考える時間になっているかな?
体験を通して、あなたの中に湧き上がる考えや気持ちは大切です。
この機会に、あなたが「カウンセリングやカウンセラーを見立てる」ということが大切かなと思います。
カウンセリングを生活の一部に取り込んでいく
カウンセリングは定期的に行うことが大切です。
もっと頻度を増やしたくなったり、逆に間隔を開けたいと感じることもあるかもしれません。
しかし、頻度は変えず、決まったタイミングで通い(オンラインの場合は、時間を作り)ます。
物理的に、時間を確保することが出来るだろうか?
経済的な負担については、どうにかなるだろうか?
などの視点も大切です。
生活全般を捉えた時、継続的に時間やお金をかけても良いと思えるかどうか考えてみましょう。
アセスメント結果/目標設定(5回目)
これまでのカウンセリングについて振り返ります。
受けてみての感想や気付きについて(あなた)
カウンセリングによる、問題の見立てと、治療方針の提案(カウンセラー)
今後のカウンセリングの方法及び頻度について話し合う
1回目に立てた目的の達成に向けた治療方針を決めます。
目的を達成する為に良い方法をカウンセラーから提案をする場合が多いでしょう。
時には、1回目の目標とは違う、本来解決しなければいけない課題が見つかる場合もあります。新たな課題の解決が、治療目標になる場合もあります。
治療方針には、頻度も含まれます。効果的な治療を進めるために必要な頻度についても話し合いをします。
✅ ここで治療を終わりにする人もいます
ある程度問題の整理と、方向性が見えてきたことにより、治療を終わりにする人もいます。
この5回で、状態が回復したり、自分でやれそうだという自信を持たれる方もいます。
当然、カウンセリングが自分には必要ない(期待と違っていた)という方が終了になる場合もあります。
✅ 必要ないなと感じたら、早めに終わらせることも重要
5回を通して、あなたがカウンセリングの必要性を感じない場合は、一旦終わらせることも大切です。
無理に続けることはありません。
特に、モチベーションが低い状態で続けることで、マイナス感情が強くなってしまいます。
改めて始めたいと感じた時が、本来のスタートになるでしょう。
継続面接(6回目~)
5回目で立てた治療方針を元に、カウンセリングを進めていきます。
内容や期間、方法や頻度は人によって変わってきます。
すぐに効果が出ない人もいれば、既に何かしら効果が出始めている人もいるでしょう。
見通しを立てることは難しいのが正直なところです。
ただ、目安として「半年間続ける」ことは、多くの場合必要だろうと思います。
実際に、お会いする相談者の多くが、半年ほど経って、実感を感じられることが多いようです。
半年を長いと取るか、短いと取るかは人それぞれだと思います。
ただ、これまでずっと困っていたことが、数回で解決できるような内容だとしたら、高いお金と時間を費やしてまで通おうとは考えないでしょう。
問題を良くしていく為には、相応の時間がかかることは必要になります。
カウンセリングの終わり
カウンセリングが始まれば、終わりもあります。カウンセリングの終わり方は様々です。
✔ 目標に到達できた
✔ 目標に到達してないが、自分で出来る見通しが持てた
✔ プライベートの環境変化(引っ越し・転職などで行けなくなる)
✔ 目標到達はしていないが、カウンセリングを辞めたい気持ちが強くなった
✔ その他
理想的には、目標を乗り越えて自分の理想の姿になっていることでしょう。
または、自分でその生活を具体的にイメージできる状態になっていることです。
しかし、実際にはその手前で終わってしまう場合も少なからずあります。
フォローアップ(約3か月後:1回)
フォローアップでは、一旦、終結した方に対して、その後問題が起きていないかを確認することを目的に単発のカウンセリングを行います。
問題が無ければ、正式に終結となります。
カウンセリングの流れをまとめたよ
改めてカウンセリングの流れをまとめてみます。
回数 | 目的 |
初回の面接 | 現在の問題の理解/カウンセリングの期待や目標の確認 |
アセスメント面接 | 問題が起きている状況の背景についての理解 / カウンセリング体験 |
アセスメント結果 | 治療方針及び目標設定の決定 |
6回目以降 | 問題解決に向けてカウンセリングスタート |
終了 | 目標がクリアした/目標はクリアしていないが、ある程度自分で対応可能と判断し、終了する |
フォローアップ | その後問題が起きていないかを確認 |
カウンセリングを始める場合、私は5回目までのアセスメントの時間を大事にしています。
表面的に起きている問題だけを切り取って、アドバイス中心のカウンセリングはしていないからです。
決してそのような方法は駄目だとは考えていません。
目的や手段は沢山あります。
しかし、問題の多くは沢山の要素が絡み合って起きています。
少し時間をかけて、一度、自分の中で理解を持つことが大切です。
理解をカウンセラーと共有することからカウンセリングはスタートします。
理解という一つの形は、都度変わっていくことはあり得ます。
しかし、理解というその人の「ものがたり」が変わっていくことも大切です。
凝り固まった「ものがたり」が、少しずつ自由に変わり始められた時、今の困り感が違ったものになるのではないかと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。