メンタルクリニックに通院を始めると、多くの方はお薬を処方されて、これを1週間飲んでみて、来週来てくださいねと言われる。そのまま薬局に行き、薬を貰い、(人によっては)会社を休みながら、一週間ゆっくりと過ごす。スタートはまず、休養とお薬とストレスから離れることを優先。
ただ、家にいる時間は、多くの人にとって、とても苦しい時間になることも多い。将来どうなるんだろう?自分がもう少し頑張れば良かったのか?いつも同じことをミスしている・・元々何か別の障害があるのでは?考えれば考える程ネガティブな思考が強くなってくる。不安ばかりが強くなり、そして寝てばかりの自分を責めてしまう日々。自分でもどうすれば良いのか分からない・・と頭を抱える。
メンタルクリニックで治療を始めたばかりの人にとって、未知の生活が始まり、身体は休まっているはずなのに、こころが休まらないことがあるかもしれません。そのような方には、お薬を使いながら、カウンセリングを同時に行うことをお勧めします。私がメンタルクリニックの現場で働いている体験を通して感じているメリットを4つ紹介します。
目次
1.カウンセリングって何ですか?
2.カウンセリングのメリットとは?
・カタルシス効果
・自分の課題の整理が出来る
・課題への対応方法を考えられる
・医者とカウンセラーの両輪で治療を進める
3.カウンセリングのデメリットや注意点
4.カウンセリングを受ける上で大切な事【元に戻ることではない】
5.まとめ
目次
1.カウンセリングって何ですか?
カウンセリングとは、カウンセラーと呼ばれる心理の専門の人と一緒に、生活の中で困っていることについて話をすることです。対話を通して、その方の認知や行動を変化させ、改善を目指していきます。特にメンタルクリニックにかかっている方の多くは、身体のだるさや気持ちの落ち込みといった症状に悩まされている人もいれば、将来への不安に押しつぶされそうになって苦しんでいる方が多くいらっしゃいます。苦しい状態を一人で抱えるだけでなく、カウンセラーと一緒に抱えていきながら、その困難を乗り越えていく。カウンセラーは、その為のお手伝いをしていく人になります。
カウンセラーと呼ばれる人は、心理学の専門的な知識を持っている人です。臨床心理士や公認心理士という名前を聞いたことがあるでしょうか?これは、心理学の専門性を示す資格の種類となります。また、教育や医療、福祉分野など様々な分野の中で専門性が違いますので、同じ資格を持っている人の中でも、得意にしている内容や、クライエント(相談に来られる人)の方と、どのような方法でその問題に取り組んでいくかについては違いがあります(この辺りは改めて記事にしますね)。
2.カウンセリングのメリットとは?
◎カタルシス効果
カタルシスとは、自分の中にあるもやもやとした感情について、言葉で話をすることで、その感情を開放する行為を指します。自分の感情を伝えることで、今まで自分の中にため込んでいたネガティブな気持ちがスッキリすることが、カタリシス効果と言います。自分が苦しかったことや嫌だったことを友人に話をすることで、気持ちが楽になった経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。それもカタリシス効果の1つです。自分の中にため込んでいくことを続けていくと、嫌な気持ちが別の嫌な気持ちと繋がっていき、余計に複雑になってしまうこともあります。その結果、より複雑難解になってしまうと、整理していく作業が難しくなってしまいます。
じゃあ友人に話をすれば、良いのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。確かに、友人に話をすることで得られるカタリシスの効果はあります。しかし、友人に話をすると、その後の友人との関係性を心配したり(聞いている方がしんどかったのではないかと考えてしまう)、逆に不必要なアドバイスをされてしまい、言ったことを後悔するということもあるかもしれません。その為、心理の専門かつ第3者であるカウンセラーに話をすることが良いと思います。
◎自分の課題の整理が出来る
自分が現在困っていることに対して、どういった理由により、それが起きてしまったのか。そして、どういった理由により、その状態が続いているのだろうか。そのような疑問が出てくると思います。ある程度明確で分かりやすい理由が見つかることもありますが、メンタルクリニックにかかろうと思うほどに困ってしまう状況については、改めて自分自身の課題として考える視点も必要になってきます。人によっては、個々が持っている元々の性格的な部分であったり、経験から得られた知識や思考パターンなども関係があるかもしれません。様々な角度から、今の状況を整理することを通して、自分の課題を整理し、自分が今置かれている位置を把握することが大切です。変わっていきたいと考える人は多いですが、まず自分の位置(言うなれば、治療を行う上でのスタートライン)を知ることで、これからどうすれば良いのか考えることが出来るでしょう。
◎課題への対応方法を考えられる
自分の置かれている位置や課題などを理解した後、その状態をどう乗り切るかを考えられるようになることが大切です。一番単純かつ即効性があるものだとしたら、ストレスがある環境から離れることが大切です。継続的に続くストレスに対して、ずっと一緒に居続けることはとても苦痛だろうと思います。しかし、そのストレスが、職場や一緒にいる家族だったとすると、離れることは大変難しい選択肢となります。その為、その場に居続けながら、気持ちをコントロール出来る方法などをカウンセラーと一緒に考えていきます。1つの選択肢だけでなく、いくつかの選択肢の中から自分で選べるということを目指します。
◎医者とカウンセラーの両輪で治療を進める
医者は患者さんの体調面の管理をメインに行い、カウンセラーは心理面のサポートを行うという形で、体調と心理の両方について役割を担っていく方法をATスプリットという言い方をします。どちらが欠けても治療自体は進んでいかないので、医者と心理はお互いに情報共有をしながら治療を進めていきます。医者が用いるお薬の効果は、カウンセリングを同時に行うことによって、より効果的に聞いてくるという実証もあります。その為、同時に行うことによるメリットは、薬の効果についてもプラスの影響を与えます。
3.カウンセリングのデメリットや注意点
◎お金がかかる
カウンセリングは自費診療になるため、保険診療外の治療方法になります。その為、料金が7000円~10000円程度かかってくる場合があります(場所によって異なります)。その為、金銭的なハードルが高く、利用することが難しいと断念してしまうケースもあります。また、本来なら1,2週間に1回行うことで、治療効果が促進されるだろう方も、経済的な理由により、間隔を空けて1か月に1回程度となる場合もあります。頻度が広がると効果が減少するか否かは、その方のカウンセリングの目的や、状態にもよりますが、一般的には間隔が空きすぎることによって、治療的な意味づけが低下し、気持ちの深い部分を探索していくようなカウンセリングには不向きになるだろうと思います。
◎時間がかかる
メンタルクリニックのお薬を使用すると、すぐに効果を感じやすいものもあります。寝られない方が利用する睡眠導入剤は、処方されたその日から、睡眠が取れることもあります(個人差は当然ありますが)。しかし、カウンセリングは1回受けただけで、劇的な変化が生まれることはあまりありません。対話が中心になるため、どうしても時間をかけながら課題を整理していき、一定の期間を継続的にカウンセリングしていくことで、効果を実感することが出来るでしょう。その為、インスタントな結果を求める人(アドバイスを求める人)には、不向きな方法になっているかもしれません。
4.カウンセリングを受ける上で大切な事【元に戻ることではない】
多くの方は、治療の目標として、体調を崩す前の状態の自分に戻りたいと希望される方が多くいらっしゃいます。当然、体調が回復するということは、以前と同じ状況が一つの指標でもあり、従来の医療とは、元の体調に戻り、生活が送れることを第一優先にします。しかし、メンタルクリニックにおける薬やカウンセリングの治療では、元に戻ることを第一優先にするというよりは、「この体調不良を気に、新たな自分の生活を見つけていく時間」という捉え方をしています。なぜかと言うと、元に戻るということは、以前の環境に戻った時には、また同じような体調不良になる可能性が高くあります。その為、この機会を利用して、自分がこれからどう過ごしていきたいのかを考え、そして試行錯誤しながらも自分らしく過ごせることを目的としています。
5.まとめ
メンタルクリニックで治療を始めた方には、カウンセリングをお勧めします。自分に起きている不調について、薬を用いて症状を軽減するだけでは、今後も繰り返し同じような出来事が起きる可能性があります。しかし、カウンセリングを通して、自分の課題を知り、そして自分らしく生きていくことを目指すことが大切です。時間や料金がかかることがハードルになる場合も多いですが、この時期に定期的にカウンセリングを行うことは大切だと思います。
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