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居場所型デイケアって何?

居場所型デイケアって何?

 かつては、入院治療が中心だった精神科医療の分野が、少しずつ地域の中で治療する流れが進んでいます。訪問看護や就労支援施設などは、社会の受け皿の一つです。実際には、社会に参加できる人はごく一部であり、多くの人は家の中に引きこもりがちな生活が続いてしまいます。一人で改善するにはどうしたら良いか分からない・家族もどうしたらよいのか分からずに疲弊してしまうなど、実際に地域として支えていくと言いながらも、家庭という最も小さいユニットに押し付けされてしまっている面もあります。

 では、どうしたら良いのでしょうか?メンタルが不調の中、一人もんもんと自分に向き合って考えることはとても難しいと思われます。その為、「居場所型デイケア」を利用することで、一人で放置されてしまいがちな課題の整理を効率よく進めることが出来るようになります。メンタルクリニックにてデイケアの立ち上げから運営に関わって10年目の私から、皆さんにご紹介したいと思います。

ここでは、居場所型デイケアがどんな場所なのか?どのような受けるメリットがあるのかについてご説明します。

1.居場所型デイケアとは?(目的/対象/時間/料金/)

2.居場所型デイケアで何をするの?(1日の流れ/プログラムの紹介)

3.居場所型デイケアのメリットとは?

4.まとめ

では、さっそくご紹介していきましょう。

1.居場所型デイケアとは?(目的/対象/時間/料金/)

居場所型デイケアとは?

対象:病院から退院をされた後、日々の生活場所が家の中に偏りやすい人。その中でも、仕事をするにはまだ体調が不安定で、これから社会的な活動を広げていきたいと思っている人。現在の居場所型デイケアの7割近くは、統合失調症の方ですが、うつ病や双極性障害など別の精神疾患を治療中の方もいらっしゃいます。

時間:6時間程度 10時~16時ぐらいの所が多いようです。その時間を他の人と一緒に過ごせるぐらいの体力が必要になってくるので、ある程度体調として回復してからでないと、利用することが難しいと思います。ただ、午前中だけ参加や午後だけの参加など、柔軟に対応してくれるデイケアもあります。なるべく定期的に通えることを目的にして、ハードルを少し下げながら参加していくことが大切です。

料金:800円程度(自立支援制度を利用の場合)(お昼ご飯が含む)。自立支援制度を利用すると、負担金1割+支払い上限があります(所得によって違いあり)。その為、仮に週5日、1か月利用した場合には、800円×5日×4週間=16000円となりますが、上限1万円の人だとすると、1万円を超えたら実質0円で利用が出来ます。(自立支援制度など、お金に関することは、<重要>精神科通院を助けてくれるお金に関する5つの方法を参考にしてください。)その為、料金的にはかなり抑えられているので、とても費用対効果の高い時間を過ごすことが出来るのではないでしょうか。

2.居場所型デイケアで何をするの?(1日の流れ/プログラムの紹介)

■1日の流れ

時間プログラム内容
10:00朝のミーティング
10:15午前中のプログラム
12:00お昼ご飯/休憩
13:00午後のプログラム
15:001日の振り返り/清掃他
16:00終了
一例です。デイケアによって時間割は変わります

居場所型デイケアの1日の流れはおおよそこのような形になる所が多いかと思います。お昼休憩を挟んだ前後に各種プログラムがあり、その内容が曜日ごとに変わっていくことが多いです。

■プログラムの紹介

 居場所型デイケアでは、様々なプログラムが用意されています。個別に取り組むようなプログラムからグループワークのように、利用されている方同士がコミュニケーションを取りながら進めていくプログラムがあります。全体的な活動の負荷は少なく、参加の有無も、個人の体調に合わせて選べるようになっています(全体プログラムに参加せず、読書をしたり、塗り絵をして過ごすなど)

◎外出お散歩
 近くの公園に出かけたり、レクレーション施設に行って過ごします。他のメンバーさんと一緒に参加することで、普段とは違った楽しみ方が見つかるかもしれません。一緒の体験を通して仲間意識を感じたり、コミュニケーションの場となります。

◎生活のリズムを整える
 「今週はこんなことをしました」と、それぞれの活動についてグループで報告します。皆で良かった点・頑張った点・もう少しこう出来たら良いなという点について、話し合い、翌週の目標にします(出来なかったことよりも、出来たことを報告してもらい話すようにしています。出来なかったことの改善では無く、出来ていることを増やすことを意識するイメージが強いです)。

◎モノづくり・クラフト
 様々な材料を使ってモノづくりを楽しむ時間です。毛糸で編み物をしたり、フェルトを使ってコースターづくりをすることなども。最初は、30分程度で完成できるものから始めていき、徐々に時間がかかるものへと移行していきます。集中力を高めることが出来たり、目の前に具体的な成果物があることにより、達成感を得やすいと言うことはあるでしょう。他の人に自分の作品を見てもらい、周囲から受け入れてもらえる体験も大きいでしょう。

◎ボディーワーク
 普段身体を動かす機会が減っているので、少しずつ身体を動かすことを始めていきます。他のメンバーと一緒に卓球をしたり、ダンスをして過ごす時間は、身体だけでなくこころもリラックスし、自然と笑ったり楽しんだりすることが出来るようになります。

◎外出お散歩
 近くの公園に出かけたり、レクレーション施設に行って過ごします。他のメンバーさんと一緒に参加することで、普段とは違った楽しみ方が見つかるかもしれません。一緒の体験を通して仲間意識を感じたり、コミュニケーションの場となります。

◎集団認知行動療法
 認知行動療法とは、物事は原因→結果として起きているだけではなく、その人それぞれの捉え方によって変化していくという考え方を元に、自分の認知と、行動について考えていく心理療法となります。自分の考え方の癖を知ることを通して、自分の中に思考や行動の選択肢をいくつか持てるようになることで、気持ちにゆとりが持てるようになります。集団で行うことによって、人との違いを知る機会にもなると共に、同じようなことで困っていることを知れることにより、ポジティブな意味での安心感(ひとりじゃないんだ)を持てる機会にもなります。

3.居場所型デイケアのメリットとは?

居場所型デイケアのメリット

◎生活リズムの安定
 生活が家の中が中心になってくると、生活リズムを作ることに難しくなります。決められた時間にデイケアに行くことが習慣化してくることによって、他の時間のリズムも作りやすくなります。メンタルの治療において、生活リズムを安定させることは、とても重要な事です。

◎仲間がいる安心感
 一人の時間が多くなってくると、気持ちが内向きになりやすくなります。そして、自分だけが、このような病気になってしまったのでは、とネガティブな思考に圧倒されてしまうこともあるかもしれません。デイケアに行くことで、同じような仲間がいることは、ひとりぼっちの寂しさや、自分を否定したくなる気持ちを和らげることに繋がります。

◎医療者と繋がっていること
 医療機関の中にある居場所型デイケアなら、もし体調が不安定な時には、すぐにスタッフまたはDrの診察を受けることが出来る安心感があります。また、デイケアのスタッフとDrとの医療連携もしやすいので、将来的な治療的な方針を立てやすくなります。

◎コミュニケーションの練習
 引きこもりがちだと他者とのコミュニケーションの機会が得られにくくなりがちです。自分のペースで少しでも会話の機会を得ることで、コミュニケーションの練習を持つことが出来ます。もし上手に関わりが持てなかったりしてもデイケアスタッフがサポートしてくれる為、チャレンジし安いですね。

◎家族の負担軽減
 日中に本人の外出先が出来ることによって、一緒に生活する家族の負担も軽減される可能性はあります。家族の人それぞれが自分の時間を作れるようになってくると、ストレスの軽減にも繋がります。その結果、会った時にはお互いが優しい気持ちで接しやすくなることもあるでしょう。

4.まとめ

居場所型デイケアまとめ

 居場所型デイケアは、リワークデイケアと比べると、もう少しゆっくりのペースで身体の調子を整えていく場所です。仕事が出来るようになる・コミュニケーションが取れるようになる、など目的がはっきりとしたものがリワークデイケアだとすると、まずは通所していることでOKと感じられるところから始めるのが居場所型デイケアの特徴です。ご興味があって、現在かかっているクリニックに無ければ、主治医の先生に相談してみるのも良いかもしれませんね。

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